「モクモクさんマジTUEEEEEE!!!」
興奮冷めやらぬ名無しが叫び声に近い声を上げると、近くにいたヘルメッポが迷惑そうに顔をしかめた。
「強ぇのは当たり前だろ。大佐だぞ」
「大佐?そうか大佐SUGEEEEEE!」
でかい獣に教われたとき、コビーが一番先に走ってスモーカーを連れてきてくれたことが命拾いになった。
一番先に逃げ出した時は本気で逃げ出したのかと思って一瞬殺意が沸いたが。
「だいたいお前が獣の子供に手を出すからこういうことになるんだろうが。もっと考えて行動しろ」
こんこんと十手で名無しの頭を叩いたスモーカーは惜しみ無く名無しの顔の前に紫煙を吐き出す。
先ほどの無臭ではなく、鼻の奥を刺激するような臭いが顔全体にまとわりついて、名無しは思い切り顔を左右に振った。
「確かに不可抗力とは言え子供を殺してしまったのは申し訳なかったと思ってる。角砂糖ぐらい」
「なんだ角砂糖って。テメェ馬鹿か?」
「ほんの少しの優しさを私なりに表現してみました!芸術的な表現過ぎたのは私の天性のセンスからだと思う!」
「間違いねぇ。紛れもなくテメェは馬鹿だ」
紫煙を振り払うように手を動かしていた名無しは、スモーカーの方を向いてしたり顔を披露したが、スモーカーはすでにこちらを見ていなかった。
これはよくあることなのであまり気にしない。
「そもそも私の獣殺しなんて寄生虫海軍様に比べたらあわわっ!」
「あわわじゃねぇよ」
わざとらしく言葉を濁した名無しをスモーカーがじろりと睨んだが、心当たりがあるらしくそのことについては深く追求することはなかった。
海軍は正義正義と謳ってはいるが、一部が正義とかけ離れたことをしているのは事実だ。海賊の脅威から逃れるためにみんな口を閉ざしているが、やっていることは似たり寄ったりだと思う。
スモーカーも自分はそうじゃなくても心当たりがあるのだろう。不機嫌そうに眉間にシワを寄せたまま何も言わずに名無しにさっさと寝ろ、と抱け吐き捨てて背中を向けた。
「お、怒ったんじゃないですか?名無しさんが余計なこと言うから」
不機嫌そうな顔をしていたスモーカーに完全にびびっているコビーは、顔を青くしておろおろとスモーカーの方に首を振ってから名無しの方を見た。
いざというときは一番度胸があるくせに何故こんなことぐらいでビビるのかが全く理解できない。生粋の媚び体質であるヘルメッポですらたいして気にしていないのに。
「私が余計なこと言わなくなったらただの可愛らしい乙女だろ。世界を揺るがすとんでもない事件だぞ」
「それはねぇよ」
コビーを慰めるべく肩を叩いて見たが、全く関係ないヘルメッポが返事をした。
本当に顔も性格も余計なことをする男だ。
「お前にだけは言われたくねぇ」
大佐と雑用
「心の声に返事すんなや変態!」
「じゃあ声に出すんじゃねぇよ露出狂!!」
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