プライスレスなキミ


ふんふんと鼻唄を歌いながら刀の手入れをしていた名無しの背後に気配を感じて、クロコダイルと名無しは同じタイミングで振り返った。


「あららら、随分と仲良しじゃねェの」

「チッ、面倒なやつが来やがった」


とぼけたような声色で探るように二人に声をかけてきたクザンに、クロコダイルがこれでもかも言わんばかりに顔を歪めて、くわえていた葉巻から大きな灰がぼろっと落ちた。
よくわからないが、クザンとクロコダイルは仲が悪いらしい。まあ、クロコダイルが誰かと仲がいいなんてことの方が珍しいのだが。


「あれ、鰐お出掛け?」

「るせェ。テメェに関係ねェだろ。散歩してくるだけだ」

「鰐がデレた」


むくりと立ち上がったクロコダイルは関係ないといいながらも目的を告げると言うなんともツンデレっぽいことをした。
本人は気が付いていないらしく、名無しの反応に訝しげな顔をしているが、ドフラミンゴがこの場にいたら多分笑いすぎて3日は寝込む気がする。

そんなことを考えていた名無しに嫌そうな顔をしたクロコダイルは、そそくさと背中を向けて散歩へと出掛けていった。
肩に引っかけられているだけの高そうなクロコダイルの外套がゆらゆらと優雅に揺れるのを見ながら、名無しは欠伸を噛み殺してからクザンの方を再度振り返った。


「クロコダイルと随分仲が良いんだね」

「腐れ縁みたいなもんだからね。金持ちだし」

「名無しちゃんにとっての仲良しになる基準が結構シビアだね」

「ギブアンドテイクだよギブアンドテイク。貧乏人は金持ちの手となり足となりってね」


噛み殺したはずの欠伸が再び込み上がってきて、思わず大きな口を開けた。
耳の奥の方でプツリとなにかが切れるような音がして、そのまま大きな欠伸を一つ。


「お金あげたら、俺の手足になってくれんのかね」


クザンの言った言葉は欠伸をしたせいかよく聞き取れなかった。
















プライスレスなキミ


「ごめん、聞こえなかった」

「もう一回聞く?」

「うーん。特に聞きたいわけじゃないかな」

「だろうね」



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