目の前にいるのは、不機嫌そうに葉巻をくわえているクロコダイルと、機嫌良さそうに肩を揺らして笑うドフラミンゴだった。
理由はよく思い出せないが、クロコダイルはインペルダウンの奥深くに沈められたと聞いていたのだが、嗜好品である葉巻を嗜みながら高そうなコートに身を包んでいるデフォルト装備で出てきた辺り、双子の兄弟か、ドフラミンゴが発掘したそっくりさんだろう。
寂しさを拗らせてとんでもないことをしてしまったドフラミンゴを責める気にはなれない。それは決して面倒だからではない。今日は海軍カレースペシャル限定セットが限定10で販売されるから先を急いでいて、もはや偽のクロコダイルと構ってちゃんのウサギドフラミンゴなんて興味がないなんて、そんな酷い本音が隠れているわけではない。
「フッフッフッ、全部駄々漏れじゃねェか」
「……」
楽しそうに歯を見せながら笑うドフラミンゴのサングラスが不気味に光って、隣にいたクロコダイルからは忌々しげな舌打ちがもれた。
「マジかよ。とりあえず先を急いでるわけじゃないけど道を開けてくんない?」
まだ昼時には早すぎる時間だが、早く行って並んでいないと買えないのだ。海軍カレースペシャルが。
しかも今回はスモーカーにも頼まれているので2食もゲットしなくてはならない。
暇をもて余して野郎とデートするぐらい重症なドフラミンゴに構っている暇なんてほんの数秒もない。
「誰と誰がデートだァ?枯らすぞ」
ああ?と眉を歪めがら名無しの喉に義手であるフックを押し付けたクロコダイルに、名無しは暫し沈黙してからじろじろとクロコダイルの上から下までを観察した。
「鰐!本物じゃん!やべー!マジかよ!生きてたんだねー!」
「フッフッフッ、よかったなァ。大歓迎じゃねェか」
フックをぺしぺしと叩きながら大口を開けてクロコダイルを歓迎する名無しに、ドフラミンゴがからかうような口調でクロコダイルの顔を覗き込む。
巨体が巨体の顔を覗き込むなんて、愛らしさの欠片もないが、それは敢えて突っ込まない。
うるせェ、と不機嫌そうに葉巻を噛んだクロコダイルに、名無しは笑顔でフックを握った。
鰐との再会
「よかった!クロコダイルがいてくれて!一緒に海軍カレースペシャルに並んでくれる人がいなくて困ってたんだよね!」
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