壁はぶち壊すのみ!



「よりによってチャルロス聖かよ!」


クザンのアドバイス通り、一刀斎は天竜人と呼ばれる世界で一番高貴な人間の手に渡っていた。
高貴と言ってもあくまでも自称だ。あんなやつらが高貴だと思っている人間は殆どいないだろう。

どんな人間でも業を背負って生きていると聞くが、天竜人は普通の人間の数倍は業を背負っているはずだ。
それほどまでにあの貴族は傍若無人であり、傲慢な人間だと思う。

そして、名無しが知りうる限りでは、チャルロス聖は特に趣味が悪い。


まだ一刀斎を受け継ぐ前だったか、受け継いですぐだった頃に、一度刀を打てと命令されて打ったのだが、受け渡したその場で試し切りされそうになった。
その場にいた仲介人がなんとか場を納めてくれたが、天竜人以外は雑草だとでも思っているらしく、どうでもよさそうに鼻をほじっていたのを未だ鮮明に覚えている。
その時に、一刀斎のことを少し聞かれたと思う。

特になにも言った覚えはないが、今思えばもともと一刀斎狙いだったと考えれば辻褄が合う。


「チャルロス聖って人間オークション覗くのが趣味だった気がする」

「人間オークションならこの間行ったばっかりじゃねェの」

「この間はこの間だろ。それは部屋のすみに置いとけよ。今を生きろ!」


過去の新聞を読み漁りながら立ち上がった名無しに、クザンは顔に乗せていた新聞を退けてから大きく欠伸をした。
結構名言っぽいことを言ったのに、クザンの反応は全くない。期待はあまりしていなかったが、それでも無反応はやっぱり傷つく。

多分この場で殺人予告をしてもクザンの反応はたいしてないのだろう。良くてあららら、に違いない。
この際わがままは言わないから、殴るとか凍らせるとかなんでもいいから突っ込みが欲しくなってきた。なんだか若々しい元気ないエースの返答が恋しい。


「世界貴族に喧嘩売っちゃダメだよ、名無しちゃん」

「聞こえませんなぁ。そもそもあいつらが先に私をハメたんだよ!くそったれめ!」


口汚いことを叫びながら、ガツガツと壁を蹴ると、上の方でクザンの標語がカタカタと音を立てて揺れた。


「俺が止めるって言ったらどうする?」

「そうだね。こう答えるかな」















壁はぶち壊すのみ!


「なるほどね」




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