楽しい海軍ライフ



遠征から帰ってきたクザンは、相変わらずダラダラとソファーで寝ている。
遠征が疲れたとか、極度の緊張状態だったとか、神経を尖らせ過ぎてストレス胃炎になったとか、本当にしょうもない話をしながら寝ている。人の太股を枕代わりにして。


所謂あれだ。恋人同士がするという、私たちこんなにラブラブなんですとアピールする恋人限定の組体操みたいなアレだ。都市伝説だと思っていたが、まさか自分が体験することになろうとは、ついさっきまでは思っていなかった。


「恋人限定の組体操ってなんかエロいよね。表現的に」

「夜の運動会的な響きだからじゃね。知らんけど」


クザンの顔は読んでいる本で見えないが、アイマスクをバッチリして今から寝ますと言わんばかりのポーズをしているのであろうことは、見なくても容易に想像できた。
今すぐ立って頭から落としてやりたいところだが、今立ち上がってもあっさり避けられるのは目に見えている。折角なら寝ているところを落としてやろうと思ったのだが、寝そうで寝ない。いい加減作戦を忘れてキレそうだ。


「そう言えば名無しちゃん、赤犬に喧嘩売ったんでしょ。どう?快適な海軍ライフ送ってる?」

「ですね。総シカトのトラップだらけのスリリングな生活がとても楽しいですね」

「あららら。結構楽しそうだね」


本から目を離すことなく、適当に答えると、クザンからも適当な答えが返ってきた。自分から適当に返したのだが、適当に返されると非常にムカつく。自己中である自覚はある。


シカトされているといっても、元々話なんてしない間柄だし、陰険な嫌がらせもたいして心に響くことはない。町で歩いていて、いちゃもんつけられるのとたいして変わりはない。
傷ついても落ちこんでもいないが、クザンの反応はムカつく。


「まあ、どうせ赤犬グループ嫌いだったし」


どうでもいいけど、と続けようとした瞬間、ぬっと出てきたクザンの手が無造作に名無しの頭を撫でた。


「頑張ってるんだね」


そう穏やかに言ったクザンに、舌打ちを返すことが精一杯だった。















楽しい海軍ライフ


「さて、名無しちゃんに振り落とされる前に起きようかな」

「なん……だと……?」



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