只今留守にしてます。




「センゴクー!書類だオラァ!!」


書類を持ったままで両手が塞がっていた名無しは、元帥の部屋の重厚なドアを思い切り蹴り開けた。
分厚いドアだったせいで足がびりびりと痛んだが、センゴクの前なのでそんな素振りは見せない。
よくわからないが、センゴクの前で顔を歪ませたら敗けのような気がする。


「なんじゃァ、またお前か。何処にいても喧しくて耳鳴りがするわい」

「…げ、ブルドッグ!」


眉間にシワを寄せて露骨に嫌そうな顔をしたのはサカズキだった。
センゴクの部屋の筈なのにセンゴクの姿は見えず、いる筈もないサカズキがいる。名無しは、部屋に足を踏み入れることなく重厚なドアは大袈裟な音を立てて閉まった。

書類を持ったままセンゴクの部屋の前に佇んでいた名無しは、確認するように上の表示を見上げてから深呼吸をする。
どこからどう見ても名無しの目の前にあるのは元帥の部屋だ。

元帥は確かセンゴクだった筈だ。
考えられることと言えばセンゴクが急死してサカズキが繰り上がりで元帥になったということだが、殺しても死ななさそうな顔をしていたのでそれは無さそうだ。
サカズキがセンゴクのあのあほ臭いカモメ姿に耐えられなくなって殺ってしまった可能性は有りそうだ。名無しも最初にあのカモメ姿を見たときは消してしまった方が海軍の為だとは思ったが、まさか本当に殺るとは思いもしなかった。


「なにをしとるんじゃ。入るならさっさと入らんかい」

「ひいっ!カレーパンみたいな顔しやがって!」


サカズキの顔がドアの隙間から覗き、咄嗟に叫んだ名無しの言葉にサカズキの顔が訝しげに歪んだ。


「センゴクさんなら今留守にしとる。書類なら置いていけ」


面倒そうに空の部屋の中を見たサカズキに名無しは目を伏せてから舌打ちをした。
別になにかムカつくことを言われたわけでもないが、何となく見下されてる感がして堪えられない。


「…毎朝早くに掃除をしとるっちゅうのはお前か」

「眼鏡とケツ顎がどうしても朝早くに掃除したいって駄々捏ねるから仕方なくだな」

「訳のわからん言い訳はいらん」

「じゃあ説教はいらん!正直どの班よりもうちの班の掃除クオリティは高いし!!」


確かに掃除の時間は基本的に鬼ごっこをして遊んでいるが、実際名無しとコビー、ヘルメッポの班の担当する2階の南棟はどの班と比べても綺麗だと言い切れる。
下手したら元帥の部屋の担当の班よりも綺麗にしている自信がある。実際元帥の部屋を担当している班の仕事っぷりは見たことがないから微妙だが、多分たいしたことはない。


荒い動作で書類をセンゴクの机にぶちまけた名無しは、近くにあったメモに『仕事しろ』と殴り書きして書類の上に乗せた。勿論クザンの名前で書いておいた。

相変わらずサカズキが名無しを訝しげな顔で見ていたが、目を合わせると説教が始まりそうだったのでそそくさと元帥の部屋から逃げ出した。






















只今留守にしてます。


「なんじゃァ、こそこそ逃げよって」



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