「海賊なんだー。そうかそうか。通りで柄が悪いと思ったよ」
キモいキモいと連呼していたファンキーな男、基、ヒートから海賊だと言うことを聞き出してみたが、海賊以外にはあり得ないファンキーさなので、特に聞く必要もない情報だったのではないかと今さらながら思う。
「その理屈で言えば、お前も間違いなく海賊だな」
関わるな、と一貫していた網タイツ男、ワイヤーはヒートが口を割ったことで諦めたらしく、どうでもよさそうに名無しを指差した。
「バカ言うなよ。こんな品行方正な私のどこに海賊要素があんだよボケナスタイツ」
「お前からは小物臭しかしねェよ」
ベー、と馬鹿にするように赤い舌を出したヒートは、言っちゃ悪いが品の悪いポーズがよく似合う。名無し同様小物臭が凄い。
こんなことならヒートとワイヤーが海賊だと賭ければよかった思った。
「そんなに賭けたいなら賭けるか?」
いかにも海賊ですと言わんばかりの悪い顔でそう言って笑ったヒートは、丸めた札束をちらつかせた。
「なにで?」
勝てる気満々でいるヒートの条件を確認すると、後ろにいたワイヤーが短くため息を吐いた。
ワイヤーの反応からして、常習的に勝っている賭け内容なのだろう。
「ここにもうすぐ俺等の船長が来る。お前は面と向かってそれを待てたら勝ちだ」
簡単だろ、と笑うヒートだが、ようやくワイヤーのため息の意味を理解した。
ぶっちゃけこんな個性的な船員を引き連れてる海賊の船長なんて、とんでもないクラスなのだろう、と。
立って待っていられないほど強面なのか、見境なく喧嘩を売るタイプか。もしかしたらどちらも兼ね備えているかもしれない。
賭けに勝っても負けても無傷ではいられなさそうだ。
「ビビってんのか?」
ヒヒッと引きつるよう笑ったヒートに名無しは腰に手を当てて顎を上げた。
当たり前だが、かなりビビっている。だが、答えは決まっている。他に選択肢なんて存在しない。
「その賭け、のった!」
名無しの答えにヒートは悪戯が成功した子供のように笑った。
後ろの正面
「お前が勝ったら10万ベリーやるよ」
「その10万で頬っぺたひっぱたいてやんよ!」
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