キチガイくんとキチガイちゃん



目が覚めると辺りは真っ暗だった。
放置していた傷はズキズキと痛むし、寝すぎたせいか頭もぼんやりとする。


「あー。なんでこんなところに寝てるんだっけな」


茂みに顔を突っ込んだままで呟いた名無しは、5秒考えて諦めた。
血が減ったせいか、考えるのもダルい。考えるのがダルいのはいつものことでもあるのだが、今日はまた一段とダルい。


「腹へッ……たァ!?」


茂みから顔を引き抜くと、目の前に男がいて、思わず声が裏返った。
痛々しくも口の端を縫ったその男のファンキーさは、名無しの理解の範疇を越えていた。
化粧についてはなにも言わないが、寝起きの頭には少々キツイ。


「ワイヤー、やっぱコイツ生きてた」


残念そうにそう言ったファンキーな男は、後ろを振り返ってもう一人に告げる。
後ろにいた男は、ため息混じりにだから言っただろうと呟いた。


「……」


後ろにいた男はまともなのかと思いきや、コスプレっぽい格好に網タイツを履いていて思わず目をそらしてしまった。
大抵のことには免疫があるつもりだし、笑って突っ込めると思っていたが、あまりにもハードルが高すぎると目をそらしてしまうものだと言うことを学んだ。


「なんだよ。死んどけよ、死ね!」


ケッ、と短く吐き捨てたファンキーな男は失礼すぎて顎が外れるかと思った。
どうやら死んでるか死んでいないか賭けていたらしく、ワイヤーと呼ばれていた男に丸められた札束を放り投げる。


「人の生死で賭けるとはけしからん奴等め!そんなノリが私は大好きだ!私も仲間に入れて!」


久しぶりに楽しそうなノリを目の当たりにして飛び起きた名無しを見たファンキーな男は、一度ワイヤーの方を見てから嫌そうな顔で口を開いた。


「なんだこいつ、キモっ」

「関わったらいけない人種だ。放っとけ」


コスプレ網タイツ野郎とファンキー野郎にだけは絶対に言われたくないことだ。















キチガイくんとキチガイちゃん


「お前等さっきから人をなんだと思ってるんだ!本気で怒るぞ!」

「キモい」

「止めろヒート。関わるな」


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