自由で狡猾な大将


確かに海賊討伐をしたいとは言った。


「言ったけどちょっとレベルがさ、嫌がらせって言うかイジメって言うか……拷問に近いよね?」


クザンから渡された島の地図とわかりやすい見取り図、そして滞在しているであろう海賊の手配書を広げた名無しは、唸るように声をあげた。


「あららら。こんな雑魚なら軽くタッチで十分じゃねェの」

「そりゃ大将からしたらだろ!私なんか雑用紛いの三等兵だよ!?立てるようになった小鹿がライオンに向かっていくようなもんだよ!?」


手配書に載っているのはいかにもと言わんばかりの極悪人面をした男。顔には大きな刀傷を負っているが、目が完全に据わっているし、修羅場をくぐり抜けてきた感じが写真からでもひしひしと伝わってくる。

再び手配書を見た名無しは、現実から逃げるように目を反らして溜め息を吐いた。


「首斬りのシードルだって。名前からしてもうカオス。死神かよ」

「出来ない言い訳?」

「は!?出来るし!誰が出来ないとか言った!?否、言ってないね!」


無理無理と言おうと思ったはずなのに、クザンのバカにしたような言葉に全く真逆なことを口走ってしまった。


「じゃあ頑張って」

「近いからここにしましたって感じだよね!この無神経男!」

「手柄は大きい方が同期くんの為になるんじゃねェの」

「絶句!!」


地図が置いてある木のテーブルをダンッと強く叩いた名無しは、しれっと人の企みを見抜いたクザンに目を見開いた。


「貴様……いつの間にかそんな!どこからそんな情報を!」

「黄猿から聞いたんでしょ。同期くんの話」


死なない程度に頑張ってね、とどうでも良さそうに手をひらひらと揺らすクザンは、本当に食えない男だ。
何にも興味がないような顔をして様々なところから情報を傍受している。

今回のことだってわざわざボルサリーノのと話をしたとは思えない。


「それは手を貸すって言ってんの?それとも黙認してやるってことなの?」

「ノー。おかしなこと口走っちゃいけねェなぁ」


あくまでも散歩に来たのだと主張するクザンに、名無しは半ば諦め気味に頷いた。















自由で狡猾な大将


「悪びれもなく悪いことしちゃうクザン、嫌いじゃないよ」

「なんのことやら」




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