生まれたての小鹿のポーズ



海から風が運ばれてきて、びっしりと汗をかいた身体を優しく慰めてくれる。


「お前のせいだぞ」

「なんで私のせいなんだよバーカ!どう考えてもお前のせいだろ!」


木陰に倒れていた名無しとピンクの髪の男、フルボディは倒れた状態から動くことはなく、口だけでブツブツと文句を重ねた。
甲板掃除をサボった挙げ句、喧嘩をしていたのがよりによってセンゴクに見つかり、それがガープに伝わり地獄のペナルティが課されたのだ。先程までは口すらも動かす余裕はなかったが、木陰で休んだおかげで少しは回復した。

ガープが力尽きた二人を親切心から木陰に並べてくれたのだろうが、並べられていた故にお互い目に入って目障りでしょうがない。お前が悪い、いやお前が悪いの水掛け論。

だが力が入らないのでこの場から立ち去ることも出来ない。


「覚えてなさいよ!あんたのしたことは麗しのヒナ嬢にチクってやるんだから!」

「大佐がお前の話なんかまともに聞くかよ!格が違うんだよ格が!」

「顔面の話か」

「全部だ全部」


倒れたままで文句言い合う二人を、ジャンゴがどうでも良さそうにため息を吐いた。


「お前ら仲いいな。俺ならあのペナルティの後に嫌いなヤツと話したくねェもんな」



ジャンゴとはハート型のサングラスをかけた似非催眠術士らしい。元々海賊だったが、訳あって海兵になったらしい。
詳しくコビーに聞いたような気がするが、興味がないので忘れた。


「仕方ねェだろ、もう口しか動かねェ」


降参するかのように大袈裟にため息を吐いたフルボディを見た名無しに沸々と負けん気が沸き上がってくるのを感じた。


「情けねぇなぁ!先輩様はもう立てないんですかー!?」

「ああ"!?なんだと!?」

「私は立てる!いーや!私は立つぞ!」


無理矢理身体に力を込めて立ち上がろうとした名無しは、気合いだけで這い上がる。
疲労が溜まりに溜まった身体はプルプルと無様に震えてはいるが、なんとか立つことだけは出来た。

本当に辛うじて立つことだけできた感じだ。今指一本で額を押されたら倒れて三日ぐらいは寝込む自信がある。















生まれたての小鹿のポーズ



「ホワタァ!ほら見ろ立った!」
「ジャンゴ、医務室連れていってくれよ」

「見ろよ!」




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