大袈裟にため息を吐きながら熱い茶を啜るガープは、名無しとヘルメッポの顔を交互に見て面倒そうな顔をする。
朝早くから廊下で殴り合いをしていた名無しとヘルメッポをたまたま見かけたガープは、早起きしなければよかったとブツブツ言っていた。
一回素通りしたのだが、一応ガープも中将という立場の人間だ。素通りは出来なかったんだろう。
「全く。朝から元気なのもいい加減にせんか」
ズズズッと茶を啜りながら目を閉じたガープは、手探りで煎餅の袋を掴む。袋の中に手を突っ込んでガサガサとビニール音を鳴らしたガープは、躊躇なく煎餅を取り出してそのまま噛み付いた。
「だってヘルメッポがいきなりキレて掴みかかってきたから」
「お前がウザイこと言うからだろ」
「いやいや!どう考えても悪いのはお前だろ!」
「そもそもお前がいけねェんだろうが!」
「なんだとこの野郎!やんのかゴラァ!」
お互いを指差していた名無しとヘルメッポは、バチバチと火花を散らしながら襟首を掴み合った。勢い付いて立ち上がったせいか椅子ががたんと後ろに倒る。
それを見ていたガープは、拳にハァと息を吹き掛けて静かに立ち上がった。
「やめんかこのバカ共!!」
「いっ!!」
「でっ!!」
ゴツンと鈍い音を立てて落ちた大きく固い拳に、名無しとヘルメッポは短く悲鳴をあげて踞った。
全盛期からしたら衰えたとはいえ、伝説とまで言われている海兵だ。痛さは言葉にならない。
「〜〜〜っ!」
痛みに悶えながら踞る二人に、ガープはまた大きくため息を吐いて、また煎餅に手を伸ばした。
ガープは、孫がやかましかったらしくやかましいことに関しては割りとおおらかだったりする。これがもしセンゴクだったら拳骨一発なんかでは済まなかっただろう。
「お前らもう少し仲良く出来んのか。エースとルフィにそっくりじゃな」
小指で耳をほじくりながらどうでも良さそうに呟いたガープは、指先に付いた耳垢を飛ばすようにフッと息を吹きかけた。
「あいつらも仲が良いくせに喧嘩ばっかりしよって」
悲しいんだか嬉しいだかよくわからない表情をしたガープに、名無しとヘルメッポが神妙な顔をする。そんな二人を後目にガープからはイビキが漏れた。
テンション、落下
「寝てる」
「いつものことだ」
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