コビーとヘルメッポは、ガープの下でメキメキと実力をつけたらしく、最早掃除なんていう雑用をしなくなったらしい。そんな話を聞いたのは本部に戻ってから約一週間経ってからだった。
最近コビーとヘルメッポ見ないなー、サボってんだなー程度にしか思っていなかったので、それを聞いたときは愕然とした。
そもそもガープが指名して部下にしたやつは、見込みがあるという暗黙のルールみたいなものが存在するらしい。
ガープ自身は気がついていないらしいが、無意識に潜在能力の高いやつをかぎ分けて選んでいるとのことだ。そんなガープ本人は、孫に似てるというよくわからない理由で選んでいるらしいのだが。
「コビーはわかるがヘルメッポは解せぬ!ヘルメッポだけは解せぬ!」
「余計なお世話だバーカ」
モップの柄に顎を預けてブーブーと文句を言っていた名無しの後ろから不満そうな声が聞こえて、目だけを向ける。
機嫌が悪そうに眉間にシワを寄せたヘルメッポは、八つ当たりするように名無しの顎を支えていたモップが蹴った。
「この短期間で雑用から卒業するとか絶対嘘!!だって私より体力無いくせに!」
「体力が全てじゃねェし。お前が無駄な時間過ごしてるからだろ」
「無駄な時間だと!?まさにその通り過ぎて反論できない!」
クッ、と悔しそうに言葉を詰まらせた名無しは、地団駄を踏むように足で強く地面に踏みつけた。
コビーのように明確な夢があるわけではないし、出世したいわけではないが、ヘルメッポに抜かされたのだけは認められない。似たようなレベルだったからこそかなり悔しい。
「お前だって気合い入れりゃ雑用なんてすぐ抜け」
「まぁ、掃除嫌いじゃないからいいんだけど」
鼓舞するかのように声を張り上げたヘルメッポに、どうでもよさそうに言葉を被せると、眉間に寄っていたシワが更に歪んだ。そしてやりきれない怒りをぶつけるように名無しの襟首を思いきり掴む。
「テメェ……っ!なにヘラヘラ笑ってんだよ!」
ヘルメッポの苛立ちについていけずに、ただ冷めたような目を向けていたつもりだったが、必死でキレるヘルメッポの顔に無意識に笑ってしまっていたらしく、怒りはおさまるどころか更にヒートアップしていった。
クレッシェンド
「やだなに怒ってんの?もしかして生理?」
「この、クソ女!!」
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