だってだって女の子



争い事が続けば続くほど、刀はよく売れる。
金持ちが増えれば増えるほど、刀はよく売れる。


武器として、装飾品として、鑑賞用として。



昔は刀が純粋に好きだった。
唯の鉄の塊から鍛えられて純度を高めていく様や、真っ赤に熱せられた刀身が湯船に浸けられて美しく反っていく姿に子供ながら感動したのを覚えている。

まあ、今考えれば人形や花などに興味を示さずに刀に感動していたと言うのは完全に変態なのだが。


ろくに世界を知らずにひたすら刀を造る手伝いばかりをしていたせいで、当たり前に刀が作れるようになってから漸く人を殺めるものだと知った。
鍛冶師である母はそれがどうした、誰がどう使おうとそれは勝手だと言っていたが、自分が造った刀で誰かが人を殺していると考えたとき、微妙に納得いかなかった。

その考えを持ったときには、既に50振以上造ってからだった。


「たしぎに返しといて」


鞘に入った白骸を軽く投げてクザンに渡す。
易々と受け取ったクザンは、中身を確かめるように刀を抜いて鞘から引き出した。


「あららら。新品みたいだな」

「だろ!?私の努力の賜物だよ!こんなに上手く接げるとか自分の才能が恐ろしいよ!」

「あー、こりゃあスゲーな」

「言い過ぎた。ちょっと調子乗った」

「そんなことねェよ。これは本当にスゲーことよ」


恥ずかしいほどの自画自賛を否定することなく頷いたクザンにはなにも望めないと感じて、自分で否定する。
手放しで誉められることなんて殆どないからか、クザンのまあそれでいいか的な流れは心に刺さる。


「調子乗んなとか死ねクズって言われた方が落ち着く」

「あらら」

「手榴弾投げたら向かい風で戻ってきたって感じがするからクザンと会話するのは得意じゃない」

「そんなにダメージ大きいの?」

「おうよ。さすが三大将の一人だけあるぜ……チクショウめ」


忌々しげにそう吐き捨てた名無しに、クザンは面倒そうに短く息を吐いて首をゆっくりと傾けた。


「女の子って優しくされるのが好きなんじゃあねェの?」


よくわからんと言わんばかりに目を細めてそう呟いたクザンに名無しは大袈裟に驚いてから逃げるように勢いよく後転した。















だってだって女の子


「女の子!私のこと女の子って言った!ネタか!?ネタなのか!?」

「名無しちゃん後転上手だね」



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