彼はキャプテン



海兵一人一人覚えているわけじゃないから、知り合いがいるかどうかはわからない。
ただ、相手は別だ。

数人だが、名無しの顔を見てあれ?こいつどこかでみたことあるぞ的な顔をした。


「うをあああ!」


あまりにも唐突で、予想外のその出来事に海軍も海賊も唖然としていたため、心を無にしてその場に落ちていた腕よりも太い枝で海兵数人を薙ぎ倒した。
不意打ちだったせいか、あまりにも上手くいきすぎたせいで、周りの海兵達が名無しを完全に敵としてロックオンしてしまった。


「手配書にはありません!ルーキーかと思われます!」

「仲間かも知れん!捕まえろ!」


錯乱状態で海兵に襲いかかったせいか、海賊だと思われたらしく、報告まがいな声が飛ぶ。
バタバタと陣形を立て直して名無しの周りを囲うようにして銃を向ける海兵達を見て、名無しは漸く事態の深刻さに気が付いた。


このまま捕まれば、身元も割れる。海兵を薙ぎ倒した事実と、海賊に加勢したという重罪まで加わってしまう。



「おい女っ!俺の邪魔すんじゃねェ!!」

「は?」


だらだらと冷や汗が背中に伝うのを感じていた名無しは、後ろから聞こえた機嫌の悪そうな声に軽く振り返る。
そこに居たのは青チャリと玉鋼を身体にくっ付けて、更に凶暴そうになった赤い髪の毛の海賊だった。

集まった金属類が手のように広がっており、その姿はまさに凶悪そのもの。


「って、ちょっ…」


名無しが海兵を薙ぎ倒したのが気にくわなかったのか、相当苛々した様子で空を突くように伸びた金属の塊が、名無しの頭上から勢いよく倒れこんできた。

後ろでは海兵が降ってくる黒い影に名無し同様、戸惑うような悲鳴が聞こえてくる。
ギギギと金属が軋むような音と、重たい地鳴りがしたのはほぼ同時だった。


萎縮していた身体に金属の破片が落ちて、意識を引き戻されたため辛うじて避けることが出来たが、逃げ遅れた数人の海兵は金属の塊に挟まれて伸びていた。


「普通に危ないんですけど!?仮にも味方っぽい感じの私にも攻撃とかどんだけなの!ヤンチャじゃ済まないよこのバカ!」

「テメェを狙ったんだから当たり前だろうが」

「なにこの子!超絶反抗期なの!?」












彼はキャプテン


「俺はうるせェ女と馬鹿が嫌いだ」

「完全に一致!」



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