言うこと言った達成感に浸っていたクザンだったが、辺りをきょろきょろと見渡してから脱力したようにその場に座り込んだ。
その行動はただの不審者でしかない。
「なにしてんの?早く帰れよ。帰って仕事しろ」
「仕事ならしてきたよ。センゴクさんが張り付いてて仕方なく」
はぁ、と大袈裟にため息を吐いたクザンだが、本来ならば元帥が張り付かれることを恥じるべきことなのだが、クザン的にはそんなことよりも仕事をしてしまったという敗北感の方が大きいらしい。この大将はもうダメだ。
「サカズキには嫌味言われるし、ボルサリーノにはネチネチ質問されるし、チャリは盗まれるし」
「……チャリ盗まれたの?」
「ここに置いてあったんだけど」
なにもない場所を指差したクザンは、完全に脱力してとうとうその場に寝転がりだした。
「探せよ」
「あー……とりあえず寝てから探すかもしれない」
「探せよ!諦めんなよ!」
余程本部に帰りたくないのか、このまま眠る気満々なクザンを奮い立たせるべく声を荒立たせるが、眠そうな目は開くことはない。
「もしかして怒ってる?」
「は?なにが?なにした?私がいないうちになんかやったのか!?」
「違う違う。ウォーターセブンに置いていったこと」
欠伸混じりにそう聞いてくるクザンは、後悔から聞いているという感じは全くしない。
その質問が興味本位なものだということは明確だった。
「別に怒ってないよそんなことで。ビックリしたけど」
「楽しかった?」
「まぁ、若干ね!基本的にうろうろすんの好きだから」
海軍に入隊する前から一刀斎を探して色々な島を巡っていたので、極貧旅をするのは苦ではない。
ただ、金は置いていってほしかったというのが本音だ。
「名無しちゃんって水だけでも生きていけるんでしょ?」
「はは!誰だ!そんな突拍子もないこと言い出したの!」
「ボルサリーノがMIA認定されたときに言ってたよ」
その言葉にボルサリーノが薄気味悪い笑みを浮かべているところが完全に脳内再生された。
「だから間違いなく生きてるって……あれ?名無しちゃん聞いてる?」
「ちょっと黙ってて!今心の復讐ノートにボルサリーノの名前を刻んでるから」
盗まれた青チャリ
「あらら。聞いちゃいねぇな」
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