MIA認定記念日



レイリーとクザンは取り留めのない会話をダラダラと繰り返した挙げ句、なんの収拾もつかないまま閉店時間になってしまった。

さすがの二人もシャクヤクには敵わないようで、そろそろ閉めるわよと言われてそそくさと席を立ち上がった。


シャクヤクはなんというか有無を言わせないオーラが凄い。
口が悪いわけでもないし、暴力的なわけでもない。客以外には。
それなのに海軍大将と海賊王の右腕をあっさりと立たせてしまうのだから相当だ。



「あ、そうだった。名無しちゃん」


渋々と店から出ていこうとするクザンは、今思い出したと言わんばかりに足を止めた。


「名無しちゃんは一応迷子ってことになってるから、海軍との接触は避けてくれる?」

「迷子!もっと他に言い方ないの!?」

「あー……殉職?」

「勝手に殺すなや!」

「なんだっけ、えーっと……あー……MIAみたいなやつ?」

「MIA!イイネ!」


クザン曰く、ウォーターセブンにて極秘に任務を与えたら、作戦困難になり消息が途絶えたというシナリオらしい。
完全に死亡フラグだと思うのは自分だけではない筈だ。

なんかもうどんな顔をして帰ればいいのかもわからない。少なくても疲弊したような顔で帰らないといけないような気がする。


「MマジでI居なくなったAアイツの略?」

「それって略す意味あるの?名無しちゃんには理解できない難しい言葉の略だよ」

「マジか。じゃあいいや。MIAだけいただいておきます」

「そうして」


面倒だから、とクザンが頭を掻く。本当はクザンも意味がわかってないのではないかと思った。


「いつまで迷子でいていいの?」

「せっかく教えたんだからMIA使ってよ」

「面倒。いつか機会があったら使おうと思ってる。それよりいつまで?」


ぼさぼさになった髪の毛を適当に後ろで結びながら聞くと、クザンはあーと間延びしたような声を出した。


「名無しちゃんの用事が終わるまで。適当に帰ってくればいいよ。記憶無くしたとかなんかで」

「適当具合がやべぇ!」

「その間給料は出ないけど」

「この鬼畜!!人に死ねって言うの!?霞食って生きてるわけじゃねぇんだぞコンニャロメ!」


思わずクザンの襟首を掴むと、クザンは眠そうな目をこちらに向けて、暫く考えてから首を傾げた。














MIA認定記念日


「名無しちゃん元気そうでよかった」

「えっ!?今の会話はなかったことにされてんの!?」



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