「えーっと、なんつってたかな……確か、玉鋼の用意が出来たとかなんとか」
酒のせいで曖昧になってしまった記憶をたどるように眉間にシワを寄せたシャンクスは、名無しが予想していた通りの言葉を口にした。
手紙で数回やり取りをしていたので玉鋼の件は了承済みだ。
もっと言えば用意ができているというのが名無しの中では大前提であり、ドフラミンゴの用事が済んだらシャクヤクの店に行く予定だった。
この程度の伝言に四皇のうちの一人を使うなんて、レイリーは相変わらず贅沢すぎる。
海賊王の右腕だったレイリーからすればシャンクスは未だに元気の有り余った馬鹿な餓鬼扱いなので仕方がないかもしれないが。
「シャンクスマジ可哀想。四皇が使いっ走りなんてクルーが見たら戦争もんだよ」
「自慢じゃあねぇが、俺はベックにいつも煙草を買いに行かされるぞ」
「そりゃ自慢じゃなくて自虐だよ」
「ベックの煙草は俺にしかわからないんだ。ベックがそう言ってた」
ふふふ、と自慢気に尚且つ照れたように笑いながらグラスに口を付けるシャンクスに、それがベックマンの策略だなんて言える気がしなかった。
名無しにも分かることなのに、シャンクスは仲間にたいして本当に盲目だ。その分ベックマンが目を光らせているのだろうが。
「で?レイ爺さんはシャクヤクさんの店にいるの?」
「ああ、その筈だ。そこまでは聞いてないが、多分」
空になったグラスに溢れんばかりに酒を注ぐシャンクスは、ご機嫌そうにニヤニヤしている。
伝言も適当で、居場所も適当。シャンクスが伝言を伝えにきたことになんの意味があるのか甚だ疑問だ。
まだ下っ端が来た方がいい仕事をしただろうに。
「まぁ、そう冷たいこと言うなよ!一応心配して様子を見に来たんだぞ」
完全に酔いが回ってきたのか、頭がゆらゆらと横に揺らしながらしゃっくりを繰り返すシャンクスに信憑性は全くなさそうだ。
どうせ酒を買うついでにシャボンディに寄ったら、たまたまシャクヤクに会って、流れで伝言を頼まれたといったところだろう。
「なかなか鋭いな」
「違うよ!シャンクスの行動が単調過ぎるだけだよ!」
船長のおつかい
「私そろそろ行くけど、頑張って一人で船に帰るんだよ?知らないお兄さんについていったら売られるから気をつけて!」
「お、おう……」
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