想像を超える青


月の蜂蜜色と溢れ出す青い炎が絶妙なコントラストをうみ出している。
ゆらりゆらりと優雅に揺れる青い炎は熱を帯びることなく煙を出すこともなく、ただただ沸き上がるばかり。


何度もこの炎をイメージして刀を打ってみたが、一度もうまくいったことはなかった。
確か、母親はサカズキのマグマをイメージして紅玉という刀を打っていた。振り切るとマグマのような紅い刃筋が残るという素敵なオプションがついていて、コレクターには未だ絶大な人気を誇っているとのこと。



「お前、本当に海軍に戻る気かよい」

「え?ああ、うん」


青い炎を目で追っていたせいで、話はほぼ聞いていなかったが、反射的に適当な返事をした。


「あんな窮屈なところに戻るやつの気がしれねェ」

「なるほど、そうだよね。別にハゲだとは思わないけど」

「お前なんの話してんだよい」

「え?髪の毛が窮屈って話じゃなくて?だからその髪型に進化したみたいな」



引き釣ったような表情を見せたマルコに、思わず少し後ずさる。反応からして間違っていたらしい。


「えーっと、なんの話かな?心の話?……違うよね。うん、違うね!」


ちらちらとマルコの表情を確認しながら探りを入れるが、どんどん険しくなっていくばかりでとてもじゃないが二の句が紡げる状態じゃなかった。

いつ張り手が飛んできてもおかしくない。


まさかマルコの炎に見惚れてましたなんて死んでも言いたくはないからビンタされた方がまだマシかもしれないが。


「お前、本当に素直じゃねェな」

「うるさいでーす。うるさいのはチャームポイントなんです!」


呆れたようにため息を吐いたマルコは、目の前に手のひらを突き出して青い炎を一気に纏った。
ゆらゆらと沸き上がる青い炎は翼になり、身体を飲み込んで不死鳥の姿へと形を変える。


「……」


地面から何かがわいてくるような音と、青く輝く身体に思わず息を飲んでからゆっくりと翼に触れる。

これまで何度も頼んだが、一度も触らせて貰えたことはなかったその炎は、熱を帯びることなどないのに、やけに暖かく感じた。


「スゲー綺麗。こんな綺麗な炎初めて見た」


生命力を感じさせる青い炎を掬うように撫でると、無意識にぼそりと呟いた。












想像を超える青




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