スルメを噛みながら酒を飲む。
こんなに幸せがあってもいいんだろうかと思ってしまう。
「お前それ女捨てすぎじゃね」
モグモグと口を動かしながらカードを捨てるように置いた名無しは、エースの方を面倒そうに見た。
胡座をかいて酒を呷りながらカードに勤しむ姿は100歩譲っても女には到底見えない。
「私を女として見ようとしてんの?エースきゅんってばどんだけ悪趣味?」
「自分で言うなよ」
引くわー、とスルメを口のなかに押し込めながらエースの方を見た名無しは、早く手札をきれと言わんばかりに顎でしゃくった。
「だって私自分が男なら絶対女だって認めたくないもん」
グラスに入っていた氷をがりがりと噛み砕く名無しにため息だけで返したエースは、手札を一瞥して端のカードを捨てた。
「そんな卑下することないんじゃないの?確かに名無しは下品で豚足のトカゲっぽいけど」
「ハルたんってばちょっと辛辣過ぎやしないか。後半とか完全に恨みしか感じない」
宥めるように口を開いたハルタだったが、本人的にはオブラートに包んだつもりだったらしく、どこが辛辣なのかさっぱりわかっていないようだった。
この悪意の無さが無意識に人を地獄に落とすのだと思う。
「ハルタってスゲー名無しのこと嫌ってるよな」
「おいやめろ!ハルタさんの毒舌トークを誘発するんじゃない!死人が出るだろ!」
色々と突っ込みたいことがあったが、あまり突っ込むと倍になって返ってくるので、珍しく自分から会話を終わらせようとしたのにも関わらず、空気を読まないエースによってその作戦は失敗に終わった。
「え?俺別に名無しのこと嫌いじゃないよ。寧ろブラックスミスとしては名無しのファンなぐらい」
「名無しの刀ってそんなスゲーの?そんな風には」
見えない、と言いかけて止めたエースだったが、ぶっちゃけそこまで言うならいっそのこと全部言ってしまえよと思う。
「名無しの母親の刀は造形美と特殊素材加工の価値が高いんだけと、名無しの刀は耐久力と殺傷能力の高さが評価されてるんだよ。そんな風には到底見えない顔つきだけどね」
「顔は関係ないんじゃないの?そこで顔を出す必要性がどこにあったっていうの?」
ショットガントーク
「オークションではウン千万いったりするんだよ」
「マジかよ!?名無しスゲー……」
「その金は全部ドフラミンゴに持っていかれてるけどね」
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