神仏系男子



「肉食!肉食!マジやべー肉食だった!」


後悔するように木のテーブルを両拳でだんだんと殴り付ける名無しは何十回と殴り付けた後、力尽きたようにテーブルに頭突きをお見舞いした。
ジンジンと痛む額も、不思議と痛みを感じない程今は後悔で頭がいっぱいいっぱいな状態だ。


「あのなー、イゾウが草食系だと思ってんのは」

「違うし。イゾウは神仏系だと思ってただけだし」

「なにそれ。お兄さん初めて聞いた」

「神仏系男子。主に悟ったであろう男子に使われる。全裸の女を見ても興奮も動揺もしない所謂神仏並みの穏やかな心を持った男子のことを言います。今そう決めた」

「お前の造語かよ。真面目に聞いて損した」

「流行るからね。流行っても絶対使うなよ!」

「使うかよ」


ギリギリと悔しそうに歯軋りをした名無しは、さっきまでの後悔をすっかり忘れているのか、苛立ちをサッチの方に向けた。
名無しが話を忘れてしまうのは日常茶飯事のことなので、サッチもいちいち突っ込むことはしない。


「イゾウは草食系でもなければ神仏系でもねぇよ。寧ろそんな風に思えてたお前の頭の中が平和すぎて心配だわ」

「えっ?私のこと心配なの?もしかして私のことが好きすぎて?」

「あー…なんか今ならお前が女だってこと忘れて顔面踏みつけられそう」


持っていた箸を思いきり握っているのか、ペキペキと木が裂けるような音が聞こえる。
サッチは基本的に女には手を上げない主義らしいが、名無しが覚えている限りでは何回か頭を鷲掴みにされて吊るされた覚えがある。

恐るべしサッチの上腕二頭筋。


「今度からサッチのことは二頭筋くんって呼んでやんよ」

「なんでそうなった?イゾウの話は?神仏系男子の方がまだマシなレベルなんだけど」

「えっ?大胸筋くんがいい?わかった」

「もはや何の話だよ」


何だかんだ言いながらもすかさず返してくれるところはサッチのいいところだ。
海軍でならもう完全にスルーされていてもおかしくない。


「だからイゾウが肉食だったって話じゃん!話逸れすぎ!」

「逸らしたのは間違いなくお前だけどな」















神仏系男子


「ちなみにセンゴクも神仏系男子です」
「それイゾウに言ったら間違いなく撃たれるぞ」


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