「名無し、ドフラミンゴと知り合い?」
厚いハムだけを挟んであるハムサンドに豪快にかぶりついた名無しは、ハルタの言葉にピタリと固まった。
大きな口を開けたまま、瞬きを数回繰り返した名無しは、隣に座っているイゾウの顔をちらりと見る。
「あー……えーっとね」
なんて言えばいいかわからずに、ハムサンドを持ったまま言葉を濁した名無しに、ハルタはにっこり笑って名無しの手からハムサンドを抜き取った。
ハムサンドを取られて、名無しが水に手を伸ばすと、イゾウが水をススッと遠ざける。
テーブルの空気が一気に冷たくなり、思わず固唾を飲み込む。
「あの、知り合いっていうか……私が作った刀を勝手に売ってる感じの関係かな」
なんと言えばいいかわからず、仕方なく思い付く感じの関係を口にしてみたが、自分で言っといてよくわからない関係だ。
そもそも勝手に売ってるというのは、完全に搾取されている関係性だ。
渋々口にした名無しにハルタがハムサンドを返し、イゾウが水を返す。
手の中に戻ってきた念願のハムサンドにかぶりついた名無しに、ハルタが不満そうに眉間にシワを寄せた。
「ドフラミンゴの傘下のオークションで、刀が大量に放出されてるらしいよ」
「マジか。でも私最近刀作ってないしな」
「オークションの意味わかってねェのか」
他人事のようにハムサンドを咀嚼していた名無しに、イゾウが呆れたように笑いながら煙管に火を入れた。
ふわりと香る紫煙に視線を移しながら硬いパンを飲み込む。
「名無しの作った刀のレプリカらしいよ」
「パプリカ!」
「レプリカ。次ふざけたらグーパンね」
「すみません」
もそもそとハムサンドを食べていた名無しが、ここぞとばかりに口を開いたが、ハルタに一蹴されてあっさり引き下がった。あまりふざけるとハルタに顔面グーパンされる。
可愛い顔をしているから冗談なんじゃないかという淡い期待を持ってしまうが、沸点は誰よりも低い。
「そのレプリカなんだけど、相当ショボいらしいんだよね」
「あー……そうなんだ」
正直、やることがドフラミンゴらしすぎて別に驚きもしない。
どうせそのショボい刀に付加価値でもつけて、更にサクラを使って自演で釣り上げたりもしているんだろう。
桃鳥からの招待状
「なんでわざわざ面倒なことして呼び出すんだろ。ドフラミンゴ用の電伝虫があるのに。捨てたけど」
「捨てたからだろ」
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