鯨が怪我をした



「聞いて聞いてマルコ!超聞いて!全力で聞いて!」


早足で船内を歩き回るマルコを小走りで追いかける名無しは、マルコのシャツをぐいぐい引っ張る。


「……」

「聞いてってばー!ねぇねぇ!聞いてよー!」


無視を決め込んで歩いていたマルコだったが、シャツを引っ張られることでイライラしだしたらしく、目元がピクピクと震えている。


「お願ーい!聞いてよ聞いてよー!」


ぐいぐいとシャツを引っ張っていた名無しだったが、無視され続けるので最終的にはすがり付くようにマルコの背中にしがみつく。
早足で歩くマルコはずるずると名無しの足を引きずりながら進む。


「テメェなんのつもりだい!邪魔だよい!」

「聞いてほしい事があるんだけどってさっきから言ってるじゃん!お前の耳は節穴か?ああん?」


背中に引っ付いて邪魔だった名無しを立ち止まってから勢いよく振り払ったマルコは、今にも殴りそうな形相で胸ぐらを掴んだ。


「聞いてほしけりゃそれなりの態度ってもんがあるだろうが!テメェのそれが人にものを頼む態度かよい!」

「たかが話を聞くだけの事を懇願されなきゃ出来ないのか?白ひげ海賊団の1番隊長殿は随分と心が狭いんですねー!」


ぎりぎりと胸ぐらを掴んで締め上げるマルコに、挑発するようにへらへらと笑って見せる名無しは少し大きめな声で嫌味を言う。
それに我慢できなくなったマルコは盛大に舌打ちをする。


「おーおー、じゃあその是非言いたいってことを言ってみろよい。しょうもないことだったらビンタじゃ済まねェぞい」


叩き付けるように胸ぐらを離したマルコは、射殺す勢いで名無しを睨み付けた。


「女はさ!『お花を摘みに行ってきます』って言うじゃん?便所に行くときに!」

「せめてトイレって言え」

「だから男は『ちょっと海王類狩ってくる』って言えばいいと思う!」

「……」


キラキラと目を輝かせてよくわからない事を言う名無しに、マルコは口を軽く開けたまま暫し固まった。


「どうよ」

「お前、まさか……そんなこと言うために」

「そうそう!アルバイトしてる時に考え付いた!」


なにかを言いかけたマルコだったが、怒りが言葉にならなかったらしく壁を思いきり蹴って穴を開けていた。












鯨が怪我をした


「男らしい素敵な言葉チョイスだと思わない?ヤベー私のボキャブラリーセンス!」



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