正直、モビーは居心地がいいと思う。
色々とこき使われるが、あまり強制されている感じはしないし、なにより自由だ。
賭事もするし、喧嘩だって日常茶飯事。
海軍なら間違いなく処罰が下るようなことが当たり前のように毎日起こっているのだ。
そんなフリーダムなところが心地よさに繋がっているのだと思う。そもそも名無しが育ってきた環境は海賊の生活に近い。
「あー…和むわぁ」
麻雀の牌が擦れ合わさるような音が響き渡り、煙草の匂いが空間に詰まっている。
麻雀は海軍本部でも行われているが、正義を掲げる本部内でお金を賭けることはしない。
外ではどうかはしらないが、少なくても海兵であることが知られているような場所で金を賭けるようなことはしないはずだ。
「この不健康的な空気とか、吸ってると落ち着く」
胸一杯に不健康そうな空気を吸い込んだ名無しは、持っていた牌を少し乱暴に真ん中に捨てた。
カチ、と隣の牌とぶつかる音がした瞬間、隣で打っていたイゾウが手牌をオープンさせた。
「和んでるときに悪いんだが、ロンだ」
「マジでか」
「大マジだ」
さあがんばろう、と意気込んだ瞬間に負けが決まってしまい、上がりかけていた気持ちがへし折られたような気がした。
容赦なく奪われる点棒に涙がちょちょぎれそうになる。本当に。
あまりの負けっぷりに思わずクザンに愚痴ろうと振り返ったのだが、よくよく考えたらクザンとははぐれたままだった。
あんなぼんやりしているやつだが、なんと言っても大将だ。なにかあったところで簡単に切り抜けられるのだろうから心配はしていない。寧ろ置いて行ったことをかなり恨んでいる。
打てば響くようなやつらばかりがいるモビーは楽しくて落ち着きはするのだが、なんでも受け流してくれるクザンがいてくれたら、なんて物凄くくだらないことを考えた。
クザンがこの場にいたら受け流すとか以前に完全に戦争になる。
「名無し、チョンボね。千点没収」
「えっ!?なんで!?」
新しい勝負のために手牌を揃えた途端、目の前に座っていたハルタが手を差し出してきて、思わず目を見開いた。
「海軍の話したからに決まってんじゃん!不快不快!超不快!千点ぐらいじゃ許しがたいぐらい不快!」
「す、すみません」
口に出しているつもりはなかったが、ばっちり口に出ていたらしい。
ハルタに点棒を渋々渡すと、隣のイゾウもすかさず手を差し出していた。
身ぐるみ剥がしコース
「俺は千点じゃ許さねェ」
「ちょっ!!」
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