「なにしてんだ」
がりがりと木目に沿って竹串を動かしていた名無しは、エースの声に顔を上げた。
「エースきゅんには私が竹串に愛を囁いてるように見えるのかな?この馬鹿ちんめ」
「じゃあなんで竹串で船の溝のごみ掘り返して遊んでんだよ」
「馬鹿ちんってなんか絶倫の呼び名みたいだよね」
「お前、人の話聞いてる?」
がりがりと溝に入った埃を掘り返して集めていた名無しはきょろきょろと辺りを見渡してなにかを探す。
エースの言葉はスルーしっぱなしだ。
いつもはスルーされている側なのでなんだか嬉しくなる。
「その紙頂戴。ゴミ乗せるから」
「ばっ!これはゴミじゃねぇよ!」
「ゴミとは言ってないよ?ゴミ乗せるからとは言ったけど」
くるくると丸めた紙を持っていたエースにねだるように手を出してみたが、名無しから逃げるように紙を上にあげた。
たった紙一枚をそんなに大切にしているなんて無駄に興味がわくから止めてほしい。
「なに?もしかして紙と結婚すんの?」
「しねぇよ」
「じゃあなんだよ!もったいぶってないで教えろよ馬鹿!」
「なにギレだ!」
だんっと床を拳で殴りつけると、埃がバラバラと散っていった。これも全てエースのせいだ。
「生意気なエース頭の髪の毛が全部ワカメになりますように!」
「だからなんでお前がキレてんだよ!」
紙を見せる気配がないエースに埃だらけの手を擦り付けながら名無しはあからさまに顔を歪めて舌打ちをした。
その手は思いきり叩き落とされたが、かわりに目の前に紙が差し出された。
その紙は海軍本部にベタベタ貼ってある手配書だ。
そしてその紙に印刷された写真の人物も知っている。
「ルフィさんだ」
「ルフィのこと知ってんのか!俺の弟なんだ!まさか手ェ出したんじゃねぇだろうな」
「まさか!どんだけ私が魅力的で可愛くて年齢不詳だからって!」
「そういう意味じゃない」
エースの背中を冗談っぽくバシバシと叩いてみたが、否定したときのエースの真顔さは凄まじかった。
これは所謂あれだ。
隊長はブラコン
「結構手遅れな感じ」
「弟を心配するのは兄貴の仕事だ」
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