ゲームオーバー



砕けた刀の数は6本。
蹴られた回数は10回を越えているが、未だに反撃は決まっていない。

口の中はズタズタで血は止まらないし、腕はガードのし過ぎで鬱血している。


「あー…痛ぇなこの野郎」


海軍での訓練の時はここまでボロボロになるまではなかったし、上官相手だと多少手加減があった。

ずきずきと痛む身体は昔の記憶を思い出させる。
ミホークによく木刀でぼこぼこ殴られて血だらけになった。それを考えればそんなに痛くないような気がしてくるから不思議だ。

口に溜まった血を吐いた名無しは、先の折れた刀を構えてマルコを見据える。


認めたくないが、マルコはポケットに手を突っ込んだままの状態で、一歩も動いていない。
野次馬だったクルーも半分は飽きてまた飲み始めている。


「血が足りなくなってきた!」

「だから謝ればいつでも許してやるって言ってるだろい」

「私が勝つので謝りませーん!マルコこそ飽きたなら謝ってもいいのよ?」

「うるせぇよい」


一気に距離を詰めて、刀を右下から振り上げるが、マルコにはわかっていたらしく難なく避けられた。
避けた際に持ち上がった左足がついでと言わんばかりに脇腹めがけて飛んでくる。

本来ならガードしたいところだが、ガードしたところでまた吹っ飛んで終りだ。
何回ガードしても同じなら、正面から捨て身で飛び込んだ方がまだ進展がある気がした。


「……をおぉぉっ!」


左脇腹にマルコの足がめり込むのを感じながら、思いきりその場で踏ん張り、刀を振り下ろした。マルコの身体を真っ二つに切り裂いた刃先には青い炎が灯る。


「なかなかやるよい」


引き裂かれた筈のマルコは青い炎に包まれながらニッと笑って見せる。
その悪徳面を見た瞬間、何故か脳裏にあの怠惰な大将の顔がチラついた。


「……くそっ」


刀は目釘が壊れて刃が飛んでいき、踏ん張っていた身体も床から引き剥がされるように宙に浮く。

あとはもうどう足掻こうが飛んでいくだけだ。
ただ、壁にぶつかる前に意識は飛んでいるのだろうと思う。













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