パラパラと船の壁から木片が落ちる音がする。
鼻の奥が熱く、耳鳴りが酷くなる。
ツツッと鼻から鼻血が流れ出て、それを袖で拭う。
「クソッタレ!かなり思いっきり蹴りやがった!」
普通なら自分より格下相手なら多少手加減しそうなものだが、久しぶりに会ったマルコは相変わらず大人げなかった。
咄嗟に刀でガードしたからよかったものの、少しでも遅れたら肋骨が間違いなく折れていたに違いない。
その証拠に胸の前で横に構えていた刀は時差でバラバラに砕け落ちた。
安物の刀だったため、仕方がないような気もするがこんなにバラバラになるなんてちょっと尋常じゃない。
「もうちょっと優しく出来ないわけ!?もう少しで死ぬところだった!」
止めどなく流れ出てくる鼻血をごしごしと拭きながら野次馬であるクルーの腰から勝手に刀を抜く。
「手加減してほしけりゃ土下座でもしろい」
「誰がするか!」
ニヤニヤと馬鹿にするように笑ったマルコは、ポケットに手を突っ込んだまま足をぷらぷらと揺らす。
武装色がちょっと使えたところでマルコの方がどう考えても強いし、ショボい刀だと蹴り一撃で砕けてしまう。
鼻から息が吸えない為、唇をうっすら開けて息を吸い込む。
鼻血のおかげか頭に上っていた血が下がって少しだけすっきりしたような気がした。
「お前、なんの為に海軍にいるんだい」
「…え」
反撃に出ようとした瞬間、青い炎が目の前で流れるように揺れていた。
マルコの声に反応した時には風を切るような音が聞こえて、刀を盾にするように構える。
続けて来るであろう衝撃に耐えるために腕で峰を補強したが、それだけでは飛んできた蹴りに耐えきれなかったため、峰が頭にぶつかった。
「いつまでも海軍にいる理由だよい。なんかあるんだろい」
「そんな、の!知るか!」
まだまだ余裕がありそうなマルコの蹴りをなんとか受け止めてはみたものの、ぎちぎちと刃が震えて今にも吹っ飛ばされそうだ。
腕には峰がめり込んでいるし、頭を強く打ったせいか頭からも生暖かい液体がゆっくりと流れ落ちる。
「じゃあもうちょっと頭冷やせ」
マルコのその言葉を合図にかろうじて止まっていた足にグッと力が入る。それを感じた時には、もう空を舞っていた。
間違えた選択肢
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