否、普通



イゾウとは最初に行商に訪れたときからの付き合いだ。
何年前からかははっきり覚えていないが、初めて造った刀を初めて褒めてくれたのがイゾウだったことは覚えている。

名無しの母親はなんと言うか結構ドライな性格で、特に刀のことになるとかなりシビアな意見しか言うことはなかった。
それだけにイゾウに褒められた時はかなり嬉しかった。



「何故イゾウが怒ったのかを真面目に考える会をここに発足したいと思います」

「わかんない名無しの頭の悪さを語る会の方がいいんじゃないの?」


イゾウが怒った理由がいまいちわからずに一番仲が良いハルタに助けを求めてみた結果がコレだ。最もハルタはまだマシな方で、他のメンバーはもっとやる気がなくて困る。


「ハルタにわかんねぇことは俺にもわからねぇ!」


がはがはと上機嫌に笑うラクヨウは、メンバーに誘った覚えはないが勝手に円陣の中に入っている。ハッキリ言って酒を飲んでるだけだ。


「イゾウって怒ると恐ェよなー」

「そうだな」


暢気にそう語るのはエースで、その隣で戸惑いながらも頷いているのがジョズ。
この二人の会話は中身がないので役に立たない。


「もう面倒だから腹切って詫びろよい」


マルコはそもそも例外だ。


別に厳選したメンバーではないので仕方ないのかもしれないが、ここまで纏まりがない話し合いも凄い気がしてきた。
そこらへんにいたやつらを半ば無理矢理円陣に引き込んだので申し訳なさはちょっぴりある。


「だがマルコ、テメェはだめだ!」

「なんだい?やんのかよい」


バキバキと指の骨を鳴らすマルコの顔は笑ってはいるがひくひくとひきつっている。
機嫌が悪いのはいつものことだが、こうも露骨に喧嘩を売ってくるのは珍しい。

ここで一言謝ればマルコも簡単に引き下がるのだろうが、生憎そんなに要領よく生きている名無しではない。


「上等だゴラァ!アンアン言わせてやるからな!」

「アンアン言わせてどーすんだよ」


勢いよく立ち上がって脅し文句を口にした名無しだったが、エースからツッコミが入ったせいで握りしめた拳が虚しく見えた。













否、普通

「ヒーヒー言わせてやる!」

「お前、マルコになにするつもりだ」



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