問題なし



「お前、親父と知り合いだったんだな」


わいわいと騒がしい中で聞こえたエースの言葉に名無しは数回瞬きをする。
その瞬きの間にしらばっくれるか聞こえなかったフリをするか考えたが、面倒くさかったので聞こえたけど答えたくないから無視することに決めた。


「こんな煩いのになんでお前の心の声はハッキリ聞こえるんだろうな」


苛立ちを抑えたような笑みを浮かべたエースだったが、面倒になったのか短く息を吐いてから持っていた酒を名無しに手渡した。
甲板にはグラグラと特徴のある声が響く。


白ひげに会ったのはもう随分昔のことだ。
母親の使いで赤髪を通じて行商に来ていたことがあり、よくしてもらっていたと思う。

一時期はその自由さと懐の広さに海賊に憧れていた時期だってあった。


「仲良し家族、羨ましいねぇ!エースくんがフェアリーに育ったのは家族のお陰か」

「だからフェアリーって言うなって言ってるだろ。つか指で混ぜんな!オッサンかよ」


からからと氷の入った酒を指でかき混ぜた名無しは、濡れた指を拭く場所を探した挙句エースのズボンに擦り付けた。
時間が経っているのか氷がだいぶ溶けて薄くなっていたが、ほろ酔いだったためそんなに気にはならない。

名無しの指を避けながらエースは思い出したように口を開けた。


「そういえばマルコが言ってたけどよ」


一度言葉を切ったエースは、暫く考えるように上を見てから名無しの方を振り返った。


「いや、いいや」


がしがしと頭を掻きながらため息と一緒にそう呟いたエースはなんだか煮え切らないような顔をしていた。


「なんだそれ。焦らして私を試そうって魂胆か!この小悪魔め!フェアリーで小悪魔とは何事だ!」

「違ェよ」


難しい顔をしているエースの頬をつねると、うざそうにその手を払う。
整った顔立ちをしているのに、眉間にシワを寄せていると台無しだ。


「てめェいい加減にしないとマジで殴るぞ」

「ひゃっひゃっひゃ!」


しつこく頬を引っ張る名無しに反撃するように両頬を引っ張り返す。名無しは両頬を思いっきり引っ張られながらバカみたいに笑った。













問題なし
「おや?エースくんの様子が……おめでとうフェアリーエースくんは小悪魔エースくんに進化した!」

「してねぇ!」




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