人生そんなもん



サッチに言われた通り甲板に出たら、甲板は既に大騒ぎになっていた。
サッチ曰く、エースこ帰還祝いと名無しの歓迎会らしいのだが、準主役はほったらかしでもう凄い盛り上がりようだ。

所詮宴をする名目が欲しいのであって、関係ないと言うことが露骨にわかる。


「おー、名無し!いたいた!こっちこいよ!」


人混みの中で一際明るい笑い声を放っていたエースが、視界の端に名無しを捉えて思いきり手を振る。

久しぶりに船に帰ってきたからなのか、随分と機嫌がいいように見えた。
ぶんぶんと手を大きく振るエースの背中でテンガロンハット揺れている。


宴が始まってだいぶ経っているのか、辺りは酒の臭いで噎せ返っていし、出された豪勢な料理は大半が完食状態。

サッチを含む4番隊他数十名のクルーはどっきり感覚で無反応でだんまりを決め込んでいたらしいが、この船ででだしが遅れるということは食いっぱぐれを意味する。


誰になにを言ったわけでもないが、酒だけは勝手に回ってくるから不思議なものだ。



「悪気はなかった」

「嘘つけ。お前からは悪気しか感じないぞ」


後ろで現状を見たサッチがぼそりと呟く。
そもそもエースが主役という時点で料理は足りなくて当たり前。

ポテトサラダに満足していた数分前の自分が腹立たしい。


「いやまぁ、わかっててやったんだけど」

「死ね腹黒フランスパン。いつか必ず正義の鉄拳を食らわしてやるからな」

「そうかよ」


酒を握りしめたまま怒りで震える名無しを馬鹿にしたように見下したサッチは、軽く鼻で笑った。


「そう言えば私の心のアイドル知らない?一度も見かけてないんだよね」

「アイドル?ああ、お前の妄想が生み出した感じの?」

「違うし!イゾウだし!私の心のアイドルって言ったらワノビューティーイゾウに決まってんじゃん!」

「なんだろうな。お前、久しぶりに見たけど相変わらずウザいな」


きゃーっと照れながらサッチの背中をバシバシと叩いた名無しに真顔で肩を叩き返す。

久しぶりに会って、しかもサブとはいえ歓迎会の主役にこの冷たい真顔の対応。
もう少し優しくしてくれる人間がいてもいいと思う。














人生そんなもん


「ま、ウザいとか言われすぎてもはや誉め言葉!」




prev next
147
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -