4番隊の作るポテトサラダは異常に美味いと思う。
サラダボウルを抱き締めながらポテトサラダを頬張る名無しに、やはり他のクルー達はなんの反応もしない。
ここまで反応されないといっそ清々しいぐらいだ。
確かにモビーには昔ちょこちょこ行商に訪れていたことがあったし、ある程度顔見知りと言うこともある。だが昔のことだし、知らない顔もちらほらいる。
それなのにサラダボウル独り占めしているよそ者になにもしない。
「名無し、もっと食え!食わないからちっさいんだぞお前は!」
「食ってるし私は小さくない!お前らが無駄にデカイだけだろ!」
隣でラクヨウがギャーギャーと騒ぎながら名無しの抱えているボウルの中に新たに他のテーブルから取ってきたポテトサラダを足していく。
格別に美味いと言えど、そんなに沢山は食べられない。
そもそもモビーに乗っているクルー達と比べられたらある程度の人間ならチビに分類されてしまうだろう。
「ラクヨウ、他のテーブルから取ってくんなよ。うちに苦情が来るんだぞ」
がたん、とプレートをテーブルに乱暴に置いて目の前に座ったサッチは、ちらっと名無しの方を見たのにも関わらずやっぱり無反応。
ここまでくると悲しくて涙もでない。
「ねぇ!ねぇねぇ!ちょっとちょっとちょっとちょっと!私そんなに存在感ないの!?誰か反応しろよ!」
苛々がピークに達した名無しはバシバシとテーブルを叩いて自らの存在を主張する。
それを聞いた食堂にいたクルー達は一瞬静まり返った。
目の前にいたサッチもきょとんとした顔をしてから、ブルブルと肩を震わせた。
「ぶはっ!」
吹き出すように笑いを吐き出したサッチを合図に、静まり返っていた食堂に笑いがわっと沸き上がった。
馬鹿にするように沸き上がった笑い声に、名無しとラクヨウは呆気に取られたように目を丸くした。
「なに?なんなの?」
「表に出ろよ名無し」
未だ止まない笑い声の中でサッチが笑いながらそう言った。
「喧嘩売ってんのかこのフランスパン」
「名無しは相変わらず短気だな」
理解出来ない展開に名無しはスプーンを握りしめたまま立ち尽くすしかなかった。
準備完了
「なんで喧嘩売ってることになるんだよ、馬鹿かお前」
「おっとラクヨウの悪口はそこまでだ」
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