気がついたら目の前に大量の野菜が積んであった。
心のアイドルであるイゾウを探していたら、食堂にいると聞いたのでルンルンで足を運んだ。
そしたら食事の用意でバタバタしていた4番隊に見つかり、目の前に野菜を積まれた。
モビーに乗っているクルーの人数は桁外れで、食事の量もとんでもない量になる。大変なのはわかるが、遊んでいるクルーなんて他にも沢山いるのだからそっちに手伝いを頼めばいいのに、と思う。
文句を言おうにも押し付けていなくなったため、一人でぶつぶつと呟きながら唇を尖らせるだけだ。
文句を言いながらもしゃりしゃりと皮を剥いていく名無しに違和感を感じるクルーもいないらしい。
普通ならよそ者が野菜の皮を剥いていたら気になりそうなものだが、モビーの場合は人数が多すぎてよそ者が認識出来ないんじゃないかと思う。それかあり得ないほど鈍いか。
「おー!名無し、ここにいたのか!」
底抜けに明るい声が背後から聞こえたと同時に背中に衝撃が走る。
大きな手のひらで叩かれたせいか、包丁が違う方向に向いて、繋がっていた皮が切れてしまった。
「ラクヨウ、包丁を持ってるときに背中を叩くなとあれほど……」
「まーた4番隊にコキ使われてんのか?お前可哀想だなぁ、よしよし」
今注意したにも関わらず、バシバシと背中を叩いたラクヨウは、包丁を持っている名無しを気にもしていないのか乱雑に頭を撫でて慰めるように抱き寄せた。
「よしよし!野良犬みたいなやつだな!よしよし!」
「やめろやめろ!野良犬ってなんだ!?匂いか!?質感か!?」
「おう?」
抱き寄せたままわしわしと頭を撫でるラクヨウは会う度に名無しを野生の動物みたいな感覚で頭を撫でる。
「臭いも質感も野良犬みたいだ!」
そして毎回デリカシーの欠片もない発言をする。
仮にも女に向かって野良犬みたいな臭いと質感だなんて本当に喧嘩を売っているようにしか見えないが、ラクヨウの言葉に悪意は存在しない。
ただ思ったことを口にしているだけで。
デリカシー、砕けた
「ちくしょー!表に出やがれこの馬鹿ドレッド野郎!」
「わんわん」
「こ、のっ!クソッタレ!」
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