「ただいまダーリン」
「帰ってくんなよいハニー」
開口一番の言葉にマルコは上から見下ろすような形で一蹴した。
エースに勝手についてきた名無しは物怖じすることもなくモビーに乗り込んだ。
そこで一番に会ったのが一番隊長であるマルコだった。
「悪い、マルコ。こいつがどうしても連れていけって煩くてよ」
バツが悪そうに頭を掻いたエースは、テンガロンハットを引き上げる。
「お前は悪くねぇよい、エース。こいつの煩さはよくわかってる」
眉間にシワを寄せて名無しを威圧的に睨み付けていたマルコは、エースを庇うように口を開いた。
久しぶりに見たマルコは相変わらず目付きも悪いし、髪型も独特を通り越して現世のものとは思えない。
「てめェの減らず口も相変わらずで俺も嬉しいよい」
「あががっ!」
心の中で呟いたはずだが、マルコにはばっちり聞こえていたらしく、頭蓋骨を砕く勢いでデコを掴まれて握られた。
昔からだがへんなところで耳がいい嫌な男だ。
「聞こえてんだよい全部」
仕上げと言わんばかりにデコを叩かれ、ふんっと短い笑いが聞こえる。
エースを迎えるために出てきていたクルー達も、よそ者とは言え若干気の毒そうな顔をしていた。
それもそのはず。マルコは年の功だけあり昔から女に関しては心が広い。
白ひげ自体が男の中の男、女子供にしか強く出れないヤツは男じゃねぇタイプなので家族であるクルー全体がそんな感じで纏まっている。
そのマルコが女を締め上げているのを見てしまった罪悪感みたいなもんだろう。
悲しいことに同情的な視線は一つもない。
「またまた嘘ばっかり」
「実は嘘。本当はあんまり悲しくない」
「相変わらずそうだね、名無し」
ふふふ、と可愛らしい感じの笑い声が背後から聞こえて、振り返らずに頷いた。
中性的な声の持ち主なんてこの船には一人しかいない。
「ハルタも相変わらず凶暴」
「俺的にはブラックスミスをお迎えするときのマナーだと思ってるんだけど」
ツンツン、と刃先が名無しの脇腹を突っつく。振り向いていたら先端が突き刺さっていたことだろう。
「ブラックスミスってやめて。なんか私に使うと渾身の捨て身ギャグみたいだから」
鯨の常連客
「あれ?私の心のアイドルイゾウはどこ行った?」
「さぁ?逃げたんじゃない?アイドルも逃げたくなるよ」
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