エースの乗っていた船は摩訶不思議な見たことのない船だった。ガレーラカンパニーのやつらが見たら興奮しそうだ。
「ねぇフェアリーエースくん」
「言ったそばからいきなり約束破ってんじゃねぇよ」
「そうだった!てへぺろ☆」
「……」
拳で頭を軽く小突きながら可愛らしく首をかしげた名無しだったが、似合わないことをしたせいか鳥肌がたった。
もう二度としない。多分。
「そんなことよりエースくん」
「あ?」
「足から火が出てるけど大丈夫?」
「なに言ってんだ今更」
悪魔の実の能力者だと言うのは知っているが、ロギアの特質はいつ見ても不思議でしかない。
大将達もロギアだし、スモーカーもロギアだ。珍しいと言うわけではないが、目の前で炎が上がるとやっぱり不思議な気持ちになる。
「心配してあげてんじゃん、頭を」
「なんで心配する対象が足から頭になってんだよ。馬鹿かお前」
「エースくんに馬鹿とか言われたくねぇですぅ」
「お前が男だったら海に沈めてる」
「女性を大切にするその気持ち、まさにフェアリー!」
乾いたような口笛を吹いて茶化すと肘鉄が飛んできて危うく海に落ちるところだった。
それでもかなり手は抜いているのか、避けるのは容易かった。
名無しの知っている人間の中ではとてつもなく優しい分類の人間だ。
「優しすぎて惚れる」
「なっ!」
「ごめん嘘」
「……」
驚いて振り返ったエースのせいでストライカーがぐらぐらと揺れる。
気のせいか若干軌道もずれた気もするがそこはエースが上手く戻す。
クザンにも言えることだが自分だけの交通手段があるのは本当に羨ましい。というか、ロギア系自体が反則みたいなものだ。
「お前そう言うこと……」
「そー言えばさーオヤジさん元気?」
「え?お前オヤジのこと知ってんのか?」
「なんか前会ったことがある気がしないでもないような気がする」
「どっちだよ」
なにかを言おうとしていたエースだったが、オヤジの名前にピクリと反応して軽く振り返った。
エースの興味とは裏腹に曖昧に答える名無しは、もうどうでもいいらしくどこか遠くを見ている。
「あー…お腹空いたよフェアリー」
こちら海の上
「お前約束守る気ないだろ」
「そんな馬鹿な!私は正義の味方ですぞ!」
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