お薬ください



ローの能力は本当に不思議な能力だ。
ローの作り出したサークルの中にいたが最後、すぱんすぱん好き勝手斬られて好き勝手くっ付けられてしまうという性格の悪いローにはぴったりの能力だ。
悪魔の実は人間を選んでるのではないかと思ってしまうほどだ。

何度も言うようだが人のちょっとした悪戯に腹を立てて左手を持って行く性格の悪いローにぴったりだ。


「だから、左手を返して!」

「それが人にものを頼む態度か?さんざん人を悪く言っといて」

「ください!」

「まず謝罪からだろ。お前、親に……いや、いい」


言いかけて止めたローは、名無しの母親のことを思い出したのだろう。親から謝罪を習っていないと確信したらしい。

一応母親の名誉の為に言っておくが、名無しの母親は礼儀はキチンとしている。
それどころか聡明で察しがいい。本当にこの母親から産まれてきたのかと疑うほどだ。

ただ、それ故に不気味な存在だとは思う。


「とりあえずなんでもいいから左手を返せ。左手がないと色々不便でならない」


ローと母親の子育てについて語ったところで腹の足しにはならないし、実際のところそんなことはどうでもいい。
だが左手はないと生活に支障がありすぎて問題だ。

試しに左手がなくても生活できるかシャチ達と試してみたが、5分もしないうちに現実が見えた。


「お前の手ならベポが食べた」

「なんだってー!?あの肉食熊草食みたいなツラしやがって人の腕を食っただと!?マジ許すまじ!!」

「嘘だ」

「嘘かよ!はよ手くれ!」


うだうだと言い訳のようなことを言うローはニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべているだけで、返す気なんて毛頭ないように見える。
もしローに敵うぐらいの力があれば引っ捕らえてインペルダウン送りにしてやるのに。


「……お前、まさか海軍にいるのか」

「えっ」


ローの目がぎろりと睨み付けるように名無しの方を見て、それにぎくっと心臓が跳ねる。


「海軍が海賊の船に乗る意味がわかってて言ってるんだろうな?」


口に出したつもりはなかったが、見事に海軍であることがバレた。
世の中はとても恐ろしい。











お薬ください


「心を閉じる薬はないですか先生」
「馬鹿に付ける薬があると思うか?」




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