「あー…なんかマジ疲れたー。略してマジ疲れた」
はぁ、と絞り出すようなため息を吐いた名無しは階段に座り込んで項垂れた。
「てめぇこんなところで何してんだ。侵入者か?」
今は誰とも話したくないというのによりによって柄の悪い感じのヤツに声をかけられてしまった。
もうコイツ地獄に落ちたらいいのに。
「てめぇが地獄に落ちろ」
厳つい顔つきの男は髪の毛を後ろに流し、格好つけて葉巻を2本もくわえている。
海軍と言うのは正義の名前を背負ったただのチンピラ集団だと思う。ここにいるとつくづくそう思ってしまう。
「まぁ待て。今私は疲れている。何故かと言うと、自分の目的を忘れただただ歩いていたからだ」
「なんだ、ただの馬鹿か」
「儚い系女子です」
「ただの痛い女だろ」
体力が有り余っていれば1000ぐらい言い返してやりたいところだが、生憎口を開ける気力がもうない。
「でもこれだけは言わせろ。私は金は持ってないぞ!」
「あ?おれが聞いてるのは、なんでてめぇがここにいるのかってことだ」
男の言葉に名無しはぽかりと情けなく口を開いて、ゆっくりと首を傾げた。
「…人はさ、なにか目的がないと生きてはいけないの?もしそうだと言うなら私は妖精なのかもしれない…っ!!」
あわわ、と口を押さえながらチラッと男の方を見る名無しに、男は冷めたように見下してため息を一つ吐き出した。
「…立て。てめぇは不審者に決まりだ。連行する」
「お前まさか妖精を信じないタイプか!?本当にいるんだぞ妖精は!」
ぎゃーぎゃーと喚く名無しの首根っこを掴んだスモーカーはずるずると引きずりながら歩いていく。
そんな名無しが、引きずられながら顔を上げるとそこには元凶とも言えるクザンが立っていた。
あららら、と情けない声が聞こえた気がしたがなんか顔がムカついたから思いきり目を反らす。
「ちょいちょい、スモーカー」
「あ?」
小さく名前を呼ばれたスモーカーは怠そうに返事をして足を止める。
引きずられていた名無しは廊下の上に落とされて、潰れたような声を出した。
「なんだ、アンタか。なんか俺に用か」
面倒そうに振り返ったスモーカーは、クザンの方を振り返って紫煙をもくもくと吐き出した。
そのうち毛穴という毛穴から煙が出てきそうなぐらいヘヴィだ。
「いや、お前じゃなくてその子に用があるんだよね。試験料未払いだから」
「未払い?不審者かと思ったら犯罪者か。死ね」
名無しを見下して思いきり紫煙を吐き出したスモーカーは、最初からだが本当に海軍かと疑いたくなるぐらい態度が横柄だ。
「そんな簡単に死ねって言うな!お前が死ね!!」
「ンだとこのクソアマァ」
「やんのかゴラァ!てめぇの顔に換気孔開けてやろうか」
暫くは我慢していたが、罪者扱いされて流石に我慢できなくなって、気がついたらいつの間にか首元を強く掴んでいた。
目の前にあったスモーカーの顔がものすごく厳つかったが、引くに引ける状態じゃなかったため思い切り舌打ちをして睨み付ける。
「あららら、取り敢えず喧嘩は後にしてくんねぇかなぁ。ガープ中将が名無しちゃんに話があるって言うから」
「なんだっけそれ…なんか聞いたことある気がする」
スモーカーはガープの名前に舌打ちをして、名無しの手を振り払う。名無しも振り払われた手をぶらぶらと揺らしながらクザンを見た。
思い出しそうだが、多分一生思い出すことはないんだろう。
誰だっけ
「名無しちゃんの気合いの入った掃除を見て是非引っ張りたいってさ」
「へー、あーそう」
prev next
12