ローは余程鬼哭が気に入っているらしい。
どこに行くにも欠かさず持って行く。
鬼哭もそれが相当嬉しいようだ。妖刀のくせに。
「……」
「……」
「なんだ、愛の告白なら悪いけどお断りだ」
無言で見つめてくるペンギンはなにか言いたそうに口を開けたが、諦めたようにそのままゆっくり閉じた。
黙っていられなかったのはシャチだ。
「その顔面でよくそんな図々しいことが言えるなお前」
「悲観的に生きたってなにも楽しくないだろ?シャチこそなにやっても平均みたいな人生で可哀想ですね!せめて顔面でボケられたらよかったのに!」
「別にボケに命かけてねぇから平均でいいし」
全体的に平均なシャチだが、船長のスペックが際立って高いので平均より下に見られてしまいそうなタイプだ。
ローについて歩いていたら完全に引き立て役だろう。
「私なら顔面で笑いをとるね!ローに勝つにはそこしかない!ローに顔芸は出来まい!」
ハハッ!と勝ち気に笑った名無しにシャチはどうでも良さそうに頷いて適当に流した。
その見下したような視線があまりにもムカついたので襟元を思い切り掴んだ。
「いや、俺が悪かった。お前も一生懸命生きてるんだよな」
「おいやめろ!なんかその同情されてる感じが堪らなくムカつく!」
穏やかな顔で肩を叩かれた名無しは掴んでいた襟元を引き寄せてガクガクと大きく揺らした。
「名無しって鬼哭の気持ちがわかるのか」
「えっ」
「えっ」
ペンギンの言葉に、掴み合いをしていた名無しとシャチは間抜けな顔でペンギンの方を振り返った。
「いや、だってさっき鬼哭が喜んでるとか言ってただろ」
「言ってたっけ?」
「言ってたな、3分ぐらい前に」
「あ、ああ……、あれね。はいはいはい」
自分で言ったことをすっかり忘れていた名無しは、曖昧に首を傾げながら相槌を打つ。
「鬼哭ってだってほらなんか輝きからしてローのこと慕ってる感じがするじゃん?何て言うかあの刃先とか」
「え?お前何語を話してんの?」
「間違いなくお前等と同じ言語の筈だけど!?」
微妙なズレ
「お前等だってもう少しで捲れそうなスカート見たらスカートに頑張れって話しかけるだろ!?それと一緒じゃん!」
「なに言ってんのかマジで理解できないからもう黙れ」
prev next
132