地雷



「え?ローってパン嫌いなの?」


タダ飯同然で潜水艦に乗り込んだ名無しは当たり前のように雑用を押し付けられていた。
最初は断っていたのだが、ベポに怒られたので仕方なく食事の用意をしているところだ。

そこで何気なく話題になったのが船長であるローの好き嫌いの話題だった。
好き嫌いといってもやはり盛り上がるのは嫌いな食べ物。


ローは意外にもパンが嫌いらしい。主食系が嫌いだとクルー達の苦労も相当だろう。

その点嫌いなものが脇役も脇役、グリンピースな自分はわりと勝ち組ではないのかと名無しは思った。思ったと言うか口に出ているので呟いたと言った方が適切かもしれない。


「グリンピースなんて鼻摘まんで飲み込めば一発じゃねぇか」

「私は世の中にグリンピースさんと二人きりになっても絶対に食すことはないな。いやこれはマジで断言しちゃう」

「しなくていいから。ホント興味ねぇから」


本当に興味なさそうなシャチは顔に似合わぬ速度でジャガイモの皮を剥いていた。
クルーが少ないせいか当番で食事の支度が回ってくるらしいのだが、作るメニューが毎回同じなのだとか。

シャチが当番の時はカレーで、他はチャーハン、野菜炒め、焼きそば、サンドイッチと続き、またカレーに戻ってくるらしい。


「試しにパンに梅干し突っ込んだやつをローに持っていってみようか」

「間違いなく帰ってこれなくなるぞ、お前」

「やだな、持っていくのは私じゃなくてシャチだろ」


ニンジンの皮を剥いていた名無しだったが、仕事が終わり暇になってしまったので、パンの中にぎゅうぎゅうと梅干しを詰め込んでいた。
それを見たシャチはギョとして言葉にならないような叫び声をあげた。


「……名無し、お前それ隠した方が……」

「は?なんで?折角美味しそうに出来たのに」


顔を青くして少しうつ向いたシャチは、名無しから目をそらすように顔ごとを横に向ける。
その不自然なシャチの動きに名無しは軽く首をかしげた。


「随分美味そうなもん作ってるじゃねぇか」

「……」


後ろから冷めたような声が聞こえて、名無しの手がぴたりと止まる。


「それ誰が食うんだ?」


目を反らしたままのシャチをチラ見した名無しは、梅干し入りパンを自らの口に突っ込んだ。








地雷



「美味そうだな、名無し」

「ぐぬぬ……!」




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