ローに初めて会ったのは、確か大雨の時だったような気がする。いや、降ってなかった気もする。
「ブレブレじゃねぇか」
「そもそも出会いに天気が関係あんのか?否!出会いに天気など関係ない!」
「お前が呟きだしたんだろ、勝手に」
艦内に名無しの声が響いて、目の前にいた男2人が顔をしかめた。
さっきベポから紹介されたが名前はもう忘れた。イルカとかヒトデとかクラゲみたいなノリだった。多分。
「シャチとペンギン。お前、相変わらず人の名前覚えねぇよな」
キャスケットを被っているシャチが、飽きれ気味にため息を吐いてフォークでブロッコリーを突き刺した。
「え?シャケ?」
「海のギャングから一気に美味しそうになったな」
「シャチだって言ってるだろ」
「私的にはマグロがいい」
「マグロはダメだろ。男として屈辱的だから」
「いやだからシャチだって」
バシバシとテーブルを叩いて異を唱えているシャチとは逆に、ペンギンは下ネタをさらっと口にした。
世の中には下ネタを言うと変態に分類されるやつと、いやらしさがない爽やかエロに分類されるやつがいるが、ペンギンはきっと後者なのだろう。
あ、そうですねと言いたくなるぐらいさらっと下ネタを口にした。
シャチは間違いなく変態に分類され、最終的には影で顔をしかめられるねっとり系に分類される。
「なんだその独断と偏見は」
そしてローは間違いなく変態でエロいけど顔が良くて頭がいいから全てのことが許される系の世界の敵だ。
魔法の言葉はお医者様だから。
勝ち組過ぎてもう空中分解してほしいぐらいムカつく。
「だいたいなんだお医者様だから……って!医者なら何してもいいのか?違うだろ!医者だってえげつない感じのもいるだろ!?」
「いきなりなにキレてんの?マジ引く」
「かーっ!なんか最初の趣旨を忘れてムカついてきた!出てこいや外科医!私と勝負しろ!」
むきーっと怒りを身体で表した名無しは、だんだんとテーブルを両拳で殴り付けながら顔を真っ赤にして叫ぶ。
そのテンションの高さにシャチとペンギンはついていけずに呆けたように口を中途半端に開けていた。
魔法の言葉
「もーっ、名無し煩いよ!」
「ヒッ!すみませんベポさん」
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