「キャプテーン、名無し見つけたよー!乗せていい?」
「おい、やめろ!人を犬拾ったから飼っていい?みたいなノリで紹介するな!」
へへへーと笑いながらローの姿を見つけて駆け寄っていくベポは、クマと言うより犬のように見える。そう考えて一瞬想像したが、喋る犬もなかなかシュールだ。
クマでも犬でも苦手なことには代わりはないから一緒だが。
「おいベポ、むやみに拾ってくるな。もとあったところに戻してこい」
「えー」
「いやだから、人を捨て猫みたいに扱うのは止めようか」
ローとは一応顔見知りの筈だが、そんな素振りは全く見せない。なので名無しも今初めて会いましたと言わんばかりの顔をしてやる。
ただ、ローが持っている鬼哭だけは気になってしょうがない。
「名無し行くところがなくて困ってるんだってー、キャプテンお願い」
「だから、人の話を聞こうよ!まさか私がこのセリフを言う日が来るとは思わなかった」
飼っていいでしょ?と言わんばかりにローに懇願するベポは人の言葉がわかるくせに名無しの言葉だけ選んで無視しているらしい。
分厚い本を読んでいたローは、やけに食い下がるベポに長いため息を吐きながらぱたりと本を閉じた。
「……鬼哭はやらねぇ」
「ちょっ、私なにも言ってないんですけど」
突如決意のように強く言ったローに呆れて肩の力が抜ける。
たしかに妖刀である鬼哭には興味はあるが、刃物類全般を扱える母親とは違い、大物は専門外だ。探しているものとも違うのはわかりきっている。
「むやみやたらに集めてたわけじゃないし、別にあんたの鬼哭にはあんまり興味ないから」
盗らない盗らない、と首を横に振るが、ローの訝しげな視線は止むことはない。これはあくまでも予想だが、母親に追いかけ回されたんじゃないかと思う。
名無しの母親は興味ないものには全く無関心だが、興味があるものにはひたすら貪欲になる。そのしつこさは度を越えていて、今じゃ懸賞金が付いていると言う話も聞いた。
「お前の母親は悪魔だ」
「やっぱりか」
目を伏せて吐き捨てたローの顔はいつもよりも青い気がした。
噂の刀狩り
「ねぇキャプテン、名無しも乗せてもいい?」
「おいクマ!少しは流れを読もうぜ!」
「え?でもボクはくまだから」
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