本部は平和を空に映したように晴天。暖かく心地のいい風が吹き抜けていく瞬間なんて正に平和そのものだ。
「昼からだったよな、巡回」
「そうですよ」
出航の準備と備品の整理が終わり、なにもすることがなくなったヘルメッポとコビーは甲板に座り込んだままぼんやりとしていた。といってもコビーはなにやら小難しい本を読んでいるし、ただぼんやりしているのはヘルメッポぐらいのものだ。
他の三等兵たちも思い思いに休息を満喫しているのだが、ヘルメッポにはこれといってすることがない。
「暇だー……」
「ヘルメッポさんも読みますか?為になりますよ」
「偉いやつの伝記なんて腹の足しにもなんねぇよ」
眠そうな目を擦りながらコビーの持っていた本のタイトルをちらっと見たヘルメッポは、大げさに肩を落としてため息を吐いた。
それを見たコビーは何とも言い難い表情のまま口を開く。
「なんか……腹の足しになるかならないかで考えるところが名無しさんに似てきましたね」
「はっ!?似てねぇよ!」
名無しが暇なときに同じようにコビーが読書を進めたところ、腹の足しにならないから嫌だとキーキー喚いていた。
金にならないことと腹が膨れないこと以外はしたくないらしい。二言目にはそれ食べれるの?とか金になるの?と返ってくる。
「だいたい名無しは本なんか読めねぇだろ」
「そんなことないですよ、たまに難しい本をつまらなそうに読んでたりしますから」
「つまらない顔で読んでる時点で察しろよ」
「でも鉱物系の本はわりと嬉しそうに読んでますよ」
「どんな変態だよ」
馬鹿にするような顔でコビーを見ていたヘルメッポの顔は、嫌悪するような顔に変化した。
ヘルメッポは名無しを馬鹿にするが、コビーから言わせて貰えば似た者同士だ。
「ヘルメッポさん、もしかして名無しさんがいないから寂しいんですか?」
「そんなわけねぇだろ」
ムッとしたように顔をしかめたヘルメッポは、バツが悪いの津悪いのかサングラスの縁を撫でた。
モーガンのこともあり、海軍側から少し警戒されているヘルメッポからしてみれば、なんの先入観もなく馬鹿笑いしている名無しといる時間はある意味気楽なんだろう。しかも時期は少し違うが同期みたいなものだ。
「ヘルメッポさん、友達は大切にした方がいいですよ」
「……わかってるっつーの」
お留守番組
「別に名無しは友達じゃねぇけどな」
「僕は名無しさんを名指しした訳じゃありませんよ」
「……」
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