存在自体がセクハラな件



鉋で木を削っていくのを正面からじっと見つめている名無しは、パウリーから漂ってくる紫煙を強く吹き返した。

別に煙が嫌だと言うわけではないのだが、暇だから嫌がらせみたいなものなのだが、パウリー的には気になるらしい。名無しの方を迷惑そうにちらちらと見た後で切ったばかりの葉巻を水の入った灰皿代わりのペンキの缶に投げ捨てた。


「そういやセクハラちゃんは今日はいないの?」

「セクハラちゃんってなんだ」

「あのほら、眼鏡クイックイッてするセクハラちゃん」


置いてあった木材の上で胡座をかきながら眼鏡を指で押し上げるような素振りをした名無しに、パウリーはああ、と小さく納得したように頷いた。


「カリファならアイスバーグさんが来たときしか来ねぇよ」

「ハンバーグさん?随分その、言いにくいんですが大変美味しそうな名前ですね」

「テメェ……アイスバーグさんにはお世話になっただろうが」

「そうなの?いやまぁパウパウが頑なにそう言い張るならそういうことにしておいてもいいけど」


そんな美味しそうな名前の人と知り合いになった覚えはないが、パウリーがそんなことを言わせないような雰囲気を醸し出しているので仕方なく折れることにした。


「テメェが盗みに入った時にカリファの隣にいた人だ!この街の市長だぞ!」

「カリファの隣にいた人ってンマー!の人?」

「……そうだ」

「ンマー!の人か!あの人なら知ってるよ!」


最初に盗みに入った時にたまたま居合わせた紳士風の男で、カリファを隣に置いていた。捨て動物を見ると拾ってしまうらしく、その日はコウモリをポケットから下げていて、名前を考えているところだった。

ルッチとカクの二人にボコられた名無しを見たアイスバーグとカリファがセクハラだセクハラだと呟いていたのは未だに覚えている。

結果的にはアイスバーグの鶴の一声で盗みに入ったことが許されたのだが、なんとなく釈然としない。


「セクハラちゃんは許せるが、ンマー!の人ににセクハラだと言われたのは受け入れられない!」

「アイスバーグさんだ」


不機嫌そうに唇を尖らせた名無しはぶーぶーと不満げにブーイングを漏らした。














存在自体がセクハラな件


「セクハラちゃんは頭良さそうだし仕事できそうだしスタイルいいし、私が勝てる部分は野性的な顔面しかないわ!」

「お前だいぶ図々しい感じのポジティブだな」




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