4番に賭けた名無しと、2番に賭けたパウリー。
笑ったのはやっぱり名無しだった。
基本的にパウリーは賭事には向いていないのだと思う。
全財産賭けるなんてただのギャンブルのキチガイだ。
「ううっ、さっきまでは調子よかったのによ…」
お前のせいだと言わんばかりに睨み付けてくるパウリーだが、名無しは一応忠告はした。
それでも2番を選んだのは誰でもないパウリー自身だ。
船大工としての腕は相当いいのに、ギャンブラーとしては底辺も底辺。
「いいですかパウパウ」
「パウパウって言うんじゃねぇよ」
「ギャンブルと言うのは欲を出すものではないのです。無心になるべきなのです」
「お前、欲まみれの面でよくそんなこと言えるな。地獄に落ちるぞ」
「フォッフォッフォッ!」
全てを悟ったような顔で高らかに笑う名無しの手には欲の象徴である札束が握り締められていて、言葉にはあまり重みを感じない。
「天竜人みたいじゃね、私」
「おい、そろそろ捕まるぞ。お前」
「いや、私も流石にあそこまで不細工じゃなかったわ!」
「もう死罪だな」
あっはっはっ、と笑い飛ばしながら手をひらひらと揺らす名無しは井戸端会議中のおばさんそのものだが、内容はバレたら処刑もののことだ。
パウリーは関わりたくないと言わんばかりに名無しから顔を反らす。
そんな嫌な空気だが名無しは全く気にした様子はなく一人でゲラゲラと笑っている。
「名無しちゃん、ちょっと仕事で抜けるけどこちらのガレーラのお兄さんと遊んでもらっとく?」
「はぁっ!?こんな面倒なやつ押し付けんなよ!」
終わりそうにない名無しの会話に痺れを切らしたのか、クザンがパウリーに名無しを丸投げしだした。
それに気がついたパウリーが必死に拒絶しようとしたが、クザンの耳には届いていないのか、クザンは相変わらずどうでも良さそうな顔をしている。
「なんだ照れてんのかパウパウ」
「照れてねぇよ」
ポンポンと肩を軽く叩いて顔を覗き込む名無しにパウリーはイラッとしたらしく、物凄く嫌そうな顔をしていた。
それはもうゴキブリでも見つけたような表情と言っても過言でないだろう。
船大工と馬鹿
「パウパウ!腕相撲して遊ぼう!」
「喧嘩売ってんのか?」
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