責任者!出てこいや!



「はい、合格。おめでとう」


やる気無さげに書類にサインをしたクザンは、書類と一緒に名無しに向かって手を差し伸べる。


「祝福の握手とかいらん」

「ノー!馬鹿言っちゃいけねぇよ。受験料ちゃんと払ってくれなきゃ渡せねぇなぁ」

「……は?」


握手じゃない、と手をひらひらと揺らしたクザンは面倒そうに眉間にシワを寄せて、名無しの隣で虎視眈々と刀を狙うたしぎに目配せした。
それに気がついたたしぎは直ぐ様姿勢を正して咳払いを一つ溢してから口を開く。


「試験を受けるには受験料が必要なんです。人員が割かれますし、本来ならば雑用からなのを飛ばして」

「ごめん、もう少しわかりやすく。人の言葉で頼む」

「受験料が必要です」

「ごめん、理解したくなかっただけだった!」


だいたい刀に釣られてやってきたのに受験料を払えとはある意味新手の詐欺だ。
受けたくて受けた訳ではないし、受験料払えるぐらいならとかげなんか食べやしない。


「いくら?」

「1万6千ベリーです」


あっさりと言ったたしぎを二度見してから、クザンを見る。
クザンは相変わらずダルそうな顔で書類をひらひらと揺らしているだけで、たしぎの言葉に適当に頷くだけだ。


「馬鹿じゃないの!?そんな紙切れに1万6千ベリーも払えとかマジ何様!詐欺なんて可愛いもんじゃねぇぞゴラァ!責任者出てこいや!!」


バシバシと机を叩きながら悲鳴に近い声を上げた名無しは、クザンの襟首を掴んで前後に揺すった。
隣にいたたしぎが若干刀に手を添えたが、それはもう無視した。


「正義を掲げる海軍が庶民様から金を巻き上げて良いと思ってんのか!」

「たしぎちゃん、試験の責任者誰だっけ?」


ぎりぎりと容赦なく首を絞める名無しにたいしたリアクションも取らずに口を開いたクザンは、仰け反るように顔を上に向けたままため息を吐いた。


「確かガープ中将です」

「あー…、名無しちゃん。ガープ中将らしいよ」

「知らんぞ!そんな曲がりそうな名前のやつ!クソッ!絶対責任者に文句言ってやる!」


全力で揺すっていたクザンの首から手を離した名無しは、試験用紙を奪い取りポケットに突っ込んだ。

どこのどいつだかは知らないが、こんな制度にしたヤツの面は一回ひっぱたいてやる。


「ガープ中将は止めといた方がいいんじゃねぇかなぁ…あの人マジおっかねぇから」


クザンは漸く解放された首を豪快に横に振ってをゴキッと鳴らす。


「うっさい!この私に!怖いものなど!存在しない!」

「あらら、そりゃあ…頼もしいね」


ふんっ、と鼻息を勢いよく鳴らした名無しに、クザンはものすごくどうでもよさそうに頷いた。






















責任者!出てこいや!


「とりあえず、行ってくる!カーブのところに!」

「ガープ中将です」

「わかった!ガープのところに!」

「いきなり呼び捨てって…若いよね」



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