「…貴女のもう一つの刀、もしかして黒骸ですか?」
「それを今聞く!?」
ギチギチと刀が重なる中で、たしぎの目が輝いていた。
こんな最中に刀に視線が行くなんてある意味凄い。
バカにしているのか、それともただの刀オタクなのか。
「貴女の刀だったと言うのはどうやら本当みたいですね」
太刀が大きさにそぐわないスピードで横に反れる。
素早く持ち直された柄がかちゃっと小さく音を立てて、そのまま首を狙う軌道に乗って猛スピードで帰ってくる。
顔に似合わず意外と容赦ない。
「でも、どんな理由があろうと白骸は私のものです!」
左から向かってくる刀を左手に持ち変えた黒骸で受けて、そのまま一気に刃を滑らせる。
「メガネちゃん、どうやら私たち友達にはなれないみたいだね!!」
「盗人とは友達にはなれません!」
「だから盗人はお前だろっ!」
耳鳴りのしそうな金属音が響いて、その度にビリビリと振動が身体の芯にまで届く。
細身の刀でたしぎの太刀を長時間防ぐのは少し無理がある。
かといって隙を見せたら勝てる気もしない。
「私とメガネちゃんが違うところを教えてやろう!」
「…私と、違うところ?」
嫌味として名無しの言葉を受け取ったたしぎは訝しげに顔を歪めて、睨み付けるように目をつり上げた。
力の籠った太刀を刀の腹で受け流して、もう一本の刀を鞘のまま素早くたしぎの顔面めがけて振り切る。
「…きゃっ!!」
上体をずらして避けたが、鞘の分までは流石に計算していなかったのか、眼鏡のフレームに鞘がぶつかってそのままずり落ちた。
「裸眼か眼鏡かで勝負ありじゃい!」
眼鏡を目で追っていたたしぎの首に刀を当てた名無しは、どうだ見ろと言わんばかりにクザンを振り返った。
「…く、不覚でした…」
残念そうに呟くたしぎの言葉が聞こえた気がしたが、完全にアイマスクをしてすやすや寝ていたクザンの姿を見たら血管がぶちギレそうになってそれどころじゃなかった。
あ、寝てる。
「テーメェェェェェ!!マジ一回その首斬らせろやァァァっ!」
「うう…スモーカーさんにまた怒られる…」
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