お茶友さん



「書類届けに来た!」


思いきりドアを開けると同時に上質な木でできたドアに綺麗に穴が開いた。
全くわからなかったが、多分こちらを向いているボルサリーノの指から黄猿ビームでも出たんだろう。

自分でしたことなのに、きっとドア修理代が名無しの給料から天引きされているに違いない。
先月の給料だって基本給に並んでガラス代だの修繕費だのマイナスがずらりと並んでいてプラマイゼロみたいな給料明細を渡されて倒れそうになった。

確かに自分がやったことが大半だったのだが、ガラス代は細かく言えば今の三等兵メンバー殆どが参加していた突発的野球チーム全体に責任があるわけだし、よくよく見たらなんで全部自分から引かれてるんだ?と疑問に思う項目が多かった。


「オォー、入るときはノックしなよォ〜。不法侵入者かと思って殺しかけたじゃあないのォ」

「嘘吐け。わざとだろ!どうせドアがちょっと古くなったから人を利用して付け替えようとか思ってんだろ!お前は昔からそん……」


舌が潤ってきてよく回る、と自ら感心した瞬間、ボルサリーノの指先が再び光って、ドアに二つ目の穴が開いた。
これでノックする前に中の様子がよく覗ける素敵なデザインのドアになったわけだ。グッドデザイン賞を頂きたい。


「書類を!届けに来たの!いちいち喧嘩売ってこないでよね!私は自分より弱そうなやつにしか興味ないんだから!」


少し厚みのある書類をバサバサと揺らしながら部屋に入ると、黄猿用ティーセットの中に珈琲を見つけて思わず二度見した。


「なんで珈琲があんの?熱でもあるわけ?ついつい手が伸びちゃうじゃん馬鹿!」


いやーん、とふざけながら用意してあった珈琲セットに手を伸ばしてみたが、ボルサリーノは冷めた視線を向けたままなんの代わり映えしない表情を見せた。あまりにも冷たい表情すぎで薬物混入の危険性を感じてすんっと鼻をならしてみる。
パッケージ的にも貰い物にしては安物っぽいからやっぱり買ってきたものなのだろう。


「黄猿……誤解してたみたい。あんた本当は優し」

「わっしの紅茶は取り寄せだから高くてねェ。名無しにガバガバ飲まれちゃ堪らないよォ〜」

「なるほど、そういうことか全てを理解した」













お茶友さん


「まあ、まあ、別に安物でも私は気にしないんだけどな!」



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