さすがのクザンも名無しの後ろにいる怪鳥に引いたらしい。
怒るとか呆れているといったわけではないが、なにかを言いたげな顔をしている。
だが、名無しになにかを説明しろと言う方が可笑しい。
何しろドフラミンゴは勝手についてきたのだ。名無しだって何故ついてきたのかさっぱりわからないし、説明してほしいぐらいだ。
「名無しちゃん」
「いい!みなまで言うな!」
なにかを言いかけたクザンの目の前に全力両手を出した名無しは、わかっていると言わんばかりにゆっくりと首を振った。
クザンが言いたいことは珍しくよくわかるのだが、それに答えることは名無しにはできないし、それ故にそれらしき言葉は面倒くさいから聞きたくない。
「じゃあ知り合い?」
「知り合いかって聞かれたらそれは違う。敢えてドフラミンゴとの関係を言葉にするなら、同じ町に住んでるけど会話したことなん」
「フッフッフッ、そりゃあ教えられねぇなぁ」
「はああ!?私の言葉をそんな適当な説明で遮るんじゃないよ!」
からかうような口調で名無しの言葉を遮ったドフラミンゴは楽しそうに笑いながらサングラスを掴んで軽く上げた。
王下七武海とはいえ、一応ドフラミンゴも海賊であり、お互い仲良くやろうというような雰囲気はない。
海軍の中でも心強いと思う海兵と、信用しきれないと思う海兵で分かれている。
クザンはどうでもいいけど巻き込まれたくはないといった超中間的な位置にいる人間だろう。
「フッフッフッ、相変わらず思った事が口からだだ漏れだなお前は」
「隠し事が出来ない素直な人間なんだよ。なに考えてるのかわからない腹黒い貴様等とは純度が違うんだ!」
机の上に散らかっていた仕事の書類をかき集めながら言い放つと、ドフラミンゴが後ろで首を傾げるのがわかった。
別に見たわけではないが、なんとなくドフラミンゴの動きの流れはわかる。
「まさかクザンの下についてるとはなぁ」
「あららら、俺の下についてちゃあ悪いっての?」
感心したような口振りのドフラミンゴに対して、クザンは少し嫌味を込めたように肩を竦めた。
「なんか腹黒狸の化かし合いみたい」
一応心の中で呟いたつもりだったが、間違えて普通に口から溢れてしまっていた。
イーブンな言い分
「失礼、口が勝手に。どうぞ続けて」
「……」
「……」
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