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 好きだよ。あなたがいないとダメなんだ。だから捨てないで、って言うのはこれで何回目だろう。何人目だろう。世間的には俺みたいなのをクズって言うんだろうか。あったかい腕に包まれながらただぼーっと考えてた。好きって言われても満たされない。高そうなお菓子をもらっても本当は嬉しくない。一粒何百円もする綺麗なチョコレートは食べ慣れない味で正直くそ不味いけど目の前の女はニコニコと微笑んで「美味しい?」と聞いてくるので、からっぽの笑顔で答える。





「とっても美味しい」





 ああ、死んでしまいたい。いっそ、殺して。





「あつし?」





 本当は、本当の本当は、アンタなんかいなくたって生きていけるし、好きとか一回も思ったことがないし、誕生日も血液型も好きな食べ物も嫌いな食べ物も覚えてない。不必要な情報だって、そう脳が判断したんだ。しょうがないね、だって愛してないし好きでもないだもん。それどころかたまに鬱陶しくなる。でも手放さないよ。
 アンタは寂しさを埋めるための道具。あのね、俺の本当に好きな子は俺を好きにはならないんだ。可哀想でしょ?寂しくて、誰かに慰めてほしくて。誰でもよかった。






「好き。あつし、好きだよ」





 その言葉のあとに(あつしは?私のこと好き?)って気持ちが入ってる。答えはイエスかはいしかない。女をよくよく見たら目元が俺の好きな子に似てることに気づいた。でも違うんだよね。当たり前だけどさ。わかってるのに重ねてしまいそうになる。寂しさを偽物で埋めても虚しくなるだけ、ってわかってるのに。君に言いたかった言葉を吐く度言葉は薄っぺらくなっていくのに君への気持ちは増すもんだから嫌になる。






「好きだよ。すごい好き」






 こんな茶番、笑えもしない。



130215 amo
為すすべなくした





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