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 「愛してる」そう言う度に君の頬が腫れる。「好きだよ」と言うと君は泣く。「…どこにも行かないで」季節は夏だというのにいつまでも長袖を着る君は周囲から浮いている。それを見て安堵するダメな俺。「俺のこと好き?」首を縦に振ろうが振りまいが、痣は増える。





「目に余るぞ」
「…なにが、」




 赤ちんの目をまっすぐに見るのが怖くなった。俺が悪いの。そうだよ。わかってるよ。どうしようもないでしょ。自分じゃもう止まらないんだ。ねえ誰か助けてよ。殴りたくないんだ。でも止まらなくて、気づいたときには終わった後で、そうしないともう抱きしめられなくなった。こんなに好きなのに。愛してるのに。




「…赤ちん、」
「何だ」
「ハサミで人の手って落とせるのかなー」





 赤ちんは誰の、と聞かなかった。ただ「俺が何を言っても、お前達には通じないんだろうな」と独り言のように呟いただけだった。見放された気がして、目の前が真っ暗になった。そうしてまた、君を殴る。なんで?が頭を埋め尽くして、もうわかんない。何で俺といてくれるの。酷いことされても好きなの。頭おかしいんじゃない。そうさせたのは俺なのに、泣きながら好きだと言う姿を愛おしく感じてしまう。





「どっか行けば。俺がいないところに、逃げちゃえば」




 手を切り落としたってきっと意味がないんだ。だから逃げて、遠くへ。おねがいだから。このままじゃきっと殺しちゃう。





「そのときは後を追って」





 手遅れなのはお互い様、ってわけ。




130212 amo
(dye)


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