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君に誘惑されてる。さらさらの髪の隙間から見える耳朶に噛みつきたい。淡々とした声で、鼓膜を揺らされる至福のとき、戸惑いのない表情を崩したい。俺だけに見せてほしい。
「高尾って本当読めない」
「え?」
はあ、と静かにため息。意図的に息を吸った。それは君の吐いた息でさえも独占したいから、なんてこれ変態っぽい?しょうがないな、って呆れてる表情も扇情的だ。笑ったときに必ず目をふせる癖がエロい。誘ってんの?
「ちょっと、近い」
あ、露骨に嫌な顔したね。うわわ。ダメだ、だってもうこんなに近付いたら歯止めが利かない。若干焦る声色に興奮した。ねえ、もっといろんな顔見せてよ。柔らかい唇に夢中で咬みついた。つんとしたメンソールの香り、潔癖な彼女を剥がす。抵抗する腕を掴んでしまえばこっちのもん。
「…いっ、た」
右端に鈍痛を残して浅く息を吸う姿。そそられる。てかやばくね?思わずキスしちゃったんだけど、色んな段階をすっ飛ばしてたわ。やばい。下を向いてるから今彼女がどんな顔をしているのかわからないけど、絶対怒ってる。
高尾、低い声にゆっくり顔を上げると彼女は口の端を釣り上げてこう言った。
「へたくそ」
ああもう殺してくれ。
130212 amo
悩める青少年の自殺願望