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本誌ネタバレです





























「俺にとって、勝利とは」




 息をすることと同じ。赤司の人間に敗北があってはならない。勝利することを投げ出したとき、俺が敗北の二文字を突きつけられたとき、きっと俺は 赤司征十郎 ではなくなる。名もなき 何か になるということ。生まれたときからインプットされたシステム。勝利し続ける人生。それには見合うほどの努力、生まれ持った資質。もしいつか俺を負かす誰かがあらわれたなら、俺はどうなるだろう。
 赤司征十郎が生き続ける絶対的な条件は勝利である。勝利を奪い取られたそのとき、俺は、赤司征十郎は死ぬのだろう。



「そんなことはあってはならない」




 そう思うと同等に、「敗北を知ってみたい」とも思う。矛盾だ。俺が死んでもなお、勝ちに執着できるだろうか。喉をかっ切り死ぬか。俺は死と隣り合わせに生きている。
 勝利に執着し、死に焦がれて。






「…あのとき、…敦に俺は殺されかけた。初めて焦りと絶望を感じたよ。」
「俺は赤ちんを殺したかった」
「何を望んでいたんだ?」
「……」
「自分でもわからないのか。」




 ごめんね、赤ちん。こんなつもりじゃなかったんだ。本当にごめんね。ごめんなさい。
 敦が膝をつき僕を見上げる。目から大粒の涙が頬を伝ってぽろぽろと落ちた。手から流れる赤はきっと 俺 の血。




「お前が謝る必要はないよ。むしろ僕を表に出してくれたこと、感謝したいくらいだ。」
「俺、赤ちんに、会いたい」
「……」
「ど、うしたらいい?赤ちんに勝てるくらい、強くなれば、」
「敦、それは無理だ。」



 無理なんだよ。

と赤ちんは言った。今までに聞いたことのない威圧的な声だった。優しさなど微塵も感じさせない声にぞっとした。冷たい両手が俺の頬を包む。




「敦、」
「…あ ぅあ、」
「好奇心とはなんて厄介なものだろうね」




 見上げた赤ちんの手までもが赤に染まっていた。





130724 amo
動機は単なる好奇心


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